防災士の資格を調べていると、まず目に入るのが「合格率9割超」という数字です。ただ、その数字だけを見て「誰でも受かる」と受け取ってしまうと、準備の見積もりを間違えます。この記事では、防災士資格取得試験の合格率が実際にどれくらいなのか、なぜその水準になるのかを試験のしくみから説明し、それでも不合格になる人の割合と原因、合格発表の流れ、落ちた場合の再受験までをまとめます。
防災士の合格率はどれくらい?公表数字の読み方
防災士の資格を認定しているのは、NPO法人日本防災士機構です。国家資格ではなく民間資格で、合格率は機構が年度ごとに集計・公表しています。それによると、2024年度の合格率は91.8%、2025年度は91.9%。ここ数年は9割強で安定して推移しています。
この数字を読むときに大事なのは、母数が「防災士養成研修講座を受けた人」だという点です。防災士試験は、誰でも申し込んで受けられる公開試験ではありません。機構が認証した研修機関(大学、自治体、民間の研修事業者など)の講座を受講した人が、その日程の最後に受験します。つまり、合格率91%台の分母は「講座を最後まで受けた人」であって、「防災に興味を持った人全員」ではないということです。
受講にはそれなりの費用と2日間前後の時間がかかりますから、その時点で「なんとなく受けてみた人」はほとんど残っていません。準備をして臨む人だけが分母に入る試験だと考えると、9割という数字は納得のいく水準です。
合格率91%台は「講座を受けきった人のうち9割が受かる」という意味の数字です。

合格率が高い理由:試験のしくみから
合格率が高いのは、試験のつくり自体が「講座の内容が身についているかを確認する」設計になっているからです。防災士資格取得試験は三択式で30問、試験時間は50分。合格基準は8割以上の正解、つまり30問中24問以上です。この基準は2019年4月に、それまでの7割(21問)から引き上げられました。基準が厳しくなった後も9割台を保っているところに、この試験の性格が出ています。
出題範囲は研修講座のテキスト(防災士教本)からで、ひっかけを競う試験ではありません。地震や津波の基礎知識、気象災害、避難と避難所の運営、行政の防災体制、家庭の備えといった、講座で扱った内容が素直に問われます。受験者は直前まで丸2日ほど講義を受けた状態で試験に臨むので、記憶が新しいうちに解けるという事情もあります。
さらに、講座の受講前に「履修確認レポート」という事前課題の提出が求められます。教本を読みながら設問に答えていく形式で、これ自体が試験範囲の予習になります。受講→試験という流れの中に、勉強のきっかけが二段階で組み込まれているわけです。
事前課題の履修確認レポートは、提出しないと受講・受験に進めません。届いたら早めに手をつけてください。
それでも落ちる人はいる:割合と原因
合格率が91.9%ということは、裏を返せば12人に1人ほどは不合格になっている計算です。受験者の多い会場なら、同じ教室に数人はいることになります。「ほぼ全員受かる」と聞いて何もせずに行くと、その数人に入りかねません。
落ちる原因は、だいたい次の三つに集約されます。ひとつは、履修確認レポートを締切直前に急いで埋めただけで、内容が頭に入っていないケース。もうひとつは、2日間の講義中に集中が切れて、後半の科目が丸ごと抜けてしまうケース。防災士の講座は朝から夕方まで詰まっていて、体力的にけっこうこたえます。そして三つめが、数字や制度名の暗記があいまいなまま本番を迎えるケースです。震度階級、警戒レベル、耐震基準の年、災害対策基本法まわりの用語など、うろ覚えだと三択でも迷います。
逆に言えば、6問まで間違えられる試験です。難問を取りにいく必要はなく、講義で強調された箇所を落とさなければ届きます。難易度そのものをもう少し詳しく知りたい方は、防災士試験の難易度をまとめた記事もあわせてどうぞ。

合格率をほぼ100%に近づける準備
やることは多くありません。教本を一冊読み込むというより、決められた流れに乗っていけば十分です。
教本の該当ページを探しながら答えます。ここで一度、範囲全体に目を通したことになります。
研修機関の講師は要点を示してくれます。印をつけたページが、そのまま直前の見直し範囲になります。
警戒レベル、震度階級、法令名など、記憶があいまいなものだけを拾い直します。
防災士試験は問題が持ち帰れず、機構が過去問を公開していないため、市販の問題集も限られています。出回っている「過去問」を名乗る教材の扱い方については、防災士の過去問についての記事で整理しています。教材探しに時間を使うより、履修確認レポートを解き直すほうが確実です。
ここまでやれば準備としては十分で、それ以上の詰め込みは必要ありません。防災士は、資格を取ってからの実践のほうがずっと長く続きます。
合格発表の流れと、落ちた場合の再受験
試験が終わっても、その場で合否が分かるわけではありません。答案は日本防災士機構で採点され、結果は後日、郵送で通知されます。通知がいつ頃届くかは会場ごとに受験者へ案内されるので、当日の説明を控えておいてください。案内された日から1週間以上過ぎても届かない場合は、機構の事務総局に問い合わせることになります。
合格しても、その時点ではまだ防災士ではありません。自治体や消防などが行う救急救命講習を修了し、登録申請をして認証登録されて、はじめて防災士を名乗れます。試験の合格は三つある要件のうちのひとつ、という位置づけです。
不合格でも資格取得の道は閉じません
研修講座を修了していれば再受験ができ、再受験の受験料は無料です(初回の受験料は3,000円)。ただし試験はいつでもどこでも実施されているわけではないため、次に受けられる日程は、受講した研修機関か日本防災士機構に相談して決めることになります。
なお、受験料や登録料といった費用は改定される場合があります。研修機関ごとの受講料にも幅がありますので、申し込み前に最新の金額を確認してください。
よくある質問
合格率の数字は、この資格が「ふるいにかけるための試験」ではないことを示しています。講座で学んだことを、家庭の備えや地域の集まりでどう使うか。試験のあとに始まるのはそちらです。試験日程や費用など変わりうる情報は、日本防災士機構の公式サイトでご確認ください。
