在宅避難に必要なものリスト 7分野でそろえる自宅ごもりの備え

水や缶詰、携帯トイレを並べた家庭の備蓄品

大きな地震のあと、家が無事でも水道と電気が止まる——在宅避難とは、その状態の自宅で数日から1週間を過ごすことです。この記事では、水と食料・トイレ・明かりと電源・調理・衛生・情報・暑さ寒さの7分野に分けて、何をどれだけ用意しておけばいいのかを具体的な数量で示します。あわせて「1週間分」といわれる根拠と、我が家の事情に合わせてリストを削る・足す考え方もまとめました。

目次

在宅避難の備えは「持ち出し袋」とは別もの

防災の準備というと、まず非常持ち出し袋を思い浮かべる方が多いと思います。ただ、持ち出し袋と在宅避難の備蓄は、目的も中身もまったく違うものです。

持ち出し袋は「家から出て避難所へ向かう数時間から1日」をしのぐためのもので、背負って歩ける重さが上限になります。一方、在宅避難の備えは「家から出ずに数日〜1週間暮らす」ためのもの。重さの制限がないぶん、水も食料もトイレ用品も、生活に必要な量をまるごと確保する発想になります。

この違いを押さえておくと、優先順位が変わります。持ち出し袋に入れる小型ラジオやホイッスルより、在宅避難ではトイレの回数分の携帯トイレや、家族が1週間食べられる量の確保のほうが効いてきます。

持ち出し袋は「移動のための装備」、在宅備蓄は「暮らしを止めないための量」。まず別ものとして分けて考えます。

なお、在宅避難ができるかどうかは、そもそも自宅が安全であることが前提です。建物の損傷が大きい場合や、浸水・土砂災害の危険がある地域では、自宅にとどまる判断自体が適切でないこともあります。避難するかとどまるかの判断は、お住まいの自治体のハザードマップと、そのときの気象庁・自治体が出す情報に従ってください。

停電に備えるLEDランタンとカセットコンロ

在宅避難に必要なものリスト:7分野

ここからが本題です。必要なものを7つの分野に分けます。バラバラに買い足していくと必ず抜けが出るので、分野ごとに「うちはどうか」を確認していくのがいちばん早いやり方です。

水と食料:飲み水は1人1日3リットル+食べ慣れたもの

飲料水と調理用の水を合わせて、1人1日3リットルが目安です。農林水産省の家庭備蓄の考え方でも、この3リットルを基準に日数分をかけ算します。1人1週間なら21リットル、2リットルのペットボトルで約10〜11本。夫婦二人暮らしなら2ケース強という量になります。

食料は、主食(米・パックごはん・乾麺・パン)と主菜(レトルト・缶詰)を組み合わせて、1人1週間で21食分以上を確保します。無洗米は2kgで約27食分になるので、普段から無洗米を常備しておくと備蓄の柱が一本立ちます。

非常食専用の長期保存食をそろえるより、普段食べている缶詰・レトルト・乾物を少し多めに買って、古いものから食べて買い足す——いわゆるローリングストックのほうが続きます。停電と断水のなかで、食べ慣れないものを口にするのは想像以上にしんどいことです。梅干し、味噌汁のインスタント、レトルトカレー、ツナ缶。いつもの棚の延長で構いません。

忘れやすいのが、飲み水以外の生活用水です。手を洗う、食器をゆすぐ、体を拭く。ポリタンクや折りたたみウォーターバッグを1つ持っておくと、給水車が来たときに運べます。お風呂の残り湯を張っておく習慣も、トイレを流す水として役に立ちます。

トイレ:実は最優先、人数×回数で数える

7分野のなかで、いちばん先に困るのがトイレです。水と食料は少し我慢がききますが、トイレは待ってくれません。断水すれば当然流せませんし、断水していなくても、下水管や排水設備が壊れている可能性がある間は流してはいけません。集合住宅で階下に汚水があふれる事故は、実際に起きています。

必要数の数え方はシンプルです。成人の排泄回数は1日およそ5回とされ、東京都はこれをもとに1人1日5回×7日=35回分を備蓄の目安として示しています。二人暮らしなら70回分。市販の携帯トイレは50回分セットなどで売られているので、意外と現実的な数字です。

携帯トイレは「回数分」で数える。家族の人数×5回×日数が必要数です。

凝固剤つきの携帯トイレ本体に加えて、使用後の袋をまとめる防臭袋、便座にかぶせる大きめのポリ袋、トイレットペーパーの予備、手指用のウェットティッシュ。このセットで一式です。選び方や実際に使ってみた感想は災害時のトイレ備蓄の記事で詳しく書いています。

明かりと電源:部屋の数だけランタンを

停電した夜の家は、想像よりずっと暗いものです。懐中電灯が1本あれば足りると思いがちですが、懐中電灯は前方しか照らせません。手がふさがるので、料理も着替えもできない。在宅避難で本当に使えるのは、置いて部屋全体を照らせるLEDランタンです。

目安は、居間・寝室・トイレ・洗面の、人が動く場所の数だけ。二人暮らしでも3〜4個あると生活が回ります。安価なものでかまいませんが、電池式かUSB充電式かは統一しておくと管理が楽です。

電源は、まずモバイルバッテリーを人数分。スマホを2〜3回充電できる容量(10,000mAh前後)が1人1個あれば、数日は情報から切り離されずに済みます。乾電池は、ランタンとラジオで使うサイズを確認して、それぞれ予備を用意します。単三と単四は用途が分かれるので、両方見ておいてください。

さらに上を狙うなら、ポータブル電源という選択肢もあります。ただ数万円の買い物になりますから、ランタン・モバイルバッテリー・乾電池がそろってから検討する順番で十分です。

調理:カセットコンロとボンベの本数

お湯が沸かせるかどうかで、在宅避難の質はかなり変わります。温かい味噌汁が飲めるだけで、気持ちの持ちようが違うのです。カセットコンロが1台あれば、湯沸かし、レトルトの温め、簡単な煮炊きまでまかなえます。

ボンベの本数は、農林水産省の食品ストックガイドで1人1週間あたり約6本が目安として示されています。二人暮らしなら12本、4人家族なら24本。実際には毎食しっかり調理するか、湯沸かし中心かで大きく変わるので、湯沸かし中心なら半分程度でも足ります。

カセットボンベには使用期限があり、製造から約7年が目安です。買い置きしたまま10年放置、という状態にならないよう、鍋の季節に古いものから使って買い足すのがいちばん確実です。

【保管で気をつけること】

カセットボンベは高温になる場所(コンロまわり・直射日光の当たる窓際・車内)に置かない。

1か所にまとめて大量に置かず、風通しのよい場所に分けて保管する。

コンロとボンベはメーカーをそろえる。他社製品の組み合わせは動作保証の対象外です。

衛生・清潔:お風呂に入れない日の備え

断水すると、まずお風呂に入れなくなります。数日は我慢できても、1週間となると衛生面でも気分の面でもこたえます。

体を拭く大判のウェットタオル、水のいらないシャンプー、口をゆすがずに使える歯みがきシート。この3つがあると、最低限の清潔が保てます。あとは通常サイズのウェットティッシュ、アルコール消毒、ポリ袋とごみ袋を多めに。ごみ収集が止まる期間があるので、ごみ袋は「多すぎるかな」と思う量で正解です。

生理用品、おむつ、常備薬は、切らすと代わりがききません。常備薬は普段の残薬に加えて1週間分の余裕を持たせ、お薬手帳(またはその写真)も一緒にしておくと、医療機関にかかるときに話が早くなります。

情報:電池で動くラジオを一つ

情報はスマホで足りると思うかもしれませんが、停電が長引けば基地局のバッテリーが尽きて、電波そのものが不安定になります。そこで効いてくるのが、乾電池で動くラジオです。

高機能なものは要りません。AM/FMが受信できて、乾電池で動く小型のもので十分です。手回し充電つきの製品もありますが、手回しでスマホを実用的な量まで充電するのはかなり大変なので、そこは期待しすぎないほうがいいと思います。

情報については、備える段階でやっておけることがもう一つあります。気象庁の防災情報ページ、お住まいの自治体の防災アプリや公式アカウント、そして自宅周辺のハザードマップ。この3つを平時のうちにブックマークしておくことです。何かが起きてから探すと、SNSの不確かな情報のほうが先に目に入ってきます。どこを見るかを先に決めておく——これも立派な備えです。

暑さ寒さ:停電した真夏・真冬を想定する

7分野で最後に置きましたが、命に直結するという意味では優先度の高い分野です。停電すればエアコンは動きません。真夏なら室内でも熱中症の危険があり、真冬なら暖房のない部屋で夜を越すことになります。

夏に備えるなら、電池式のハンディファン、冷却シート、経口補水液。冬なら、使い捨てカイロを多めに、アルミの保温シート、寝袋や毛布の予備。石油ストーブがあるご家庭は、電気を使わない対流式であれば停電中も暖房と湯沸かしを兼ねられますが、換気は必ず必要です。

この分野は、季節によって必要なものが入れ替わります。夏の初めと冬の初めに、押し入れの備蓄を入れ替えるついでに点検する。年2回のリズムにしておくと忘れません。

1週間分の目安として積まれた飲料水と米袋

何日分そろえる?1週間分が目安といわれる理由

備蓄は「最低3日、できれば1週間」といわれます。この3日と1週間には、それぞれ意味があります。

3日というのは、道路が寸断された直後に外部からの支援が届きにくい期間の目安です。そして1週間は、大規模災害で救助・救出活動が優先される間、家庭が自力でしのぐことを想定した期間。農林水産省の家庭備蓄ガイドも、最低3日分、できれば1週間分を推奨しています。

2人暮らしで1週間分をそろえると、こんな量になります。

分野2人×7日分の目安
飲料水42L(2Lペットボトル21本=約2.5ケース)
主食+主菜42食分以上(無洗米2kg+レトルト・缶詰)
携帯トイレ70回分+防臭袋
カセットボンベ12本(湯沸かし中心なら6本程度でも可)
LEDランタン3〜4個+乾電池の予備
モバイルバッテリー2個(各10,000mAh前後)

数字にすると、けっこうな量です。ここで大事なのは、いきなり全部そろえようとしないこと。まず3日分をきっちり作り、そのあと買い物のたびに1品ずつ足して1週間分に近づけていく。この順番なら、家計にも収納にも無理がかかりません。

逆にいえば、3日分がそろった時点で、何もない状態からは大きく前進しています。1週間分に届かないうちは不十分——そんなふうに考える必要はありません。

リストは家に合わせて削る・足す

ここまで書いてきたリストは、あくまで平均的な世帯を想定したものです。実際には、家ごとに削っていいものと、必ず足すべきものがあります。

削っていいのは、その家に該当しないもの。子どもがいなければ粉ミルクもおむつも要りませんし、オール電化の家に石油ストーブを買い足す必要はありません。防災グッズのリストをそのまま買いそろえようとすると、使わないものが押し入れを占領します。

足すべきなのは、その家にしかない事情です。乳幼児がいればミルク・離乳食・おむつ。高齢の家族がいれば、常備薬に加えて介護用品、やわらかい食事、入れ歯の洗浄剤。持病があれば予備の薬と処方内容の控え。そしてペットのいるお宅では、フードと水、療法食、トイレ用品、キャリーケース。我が家にも黒猫がいますが、猫のフードは銘柄を変えると食べてくれないことがあるので、いつものものを1〜2袋多めに置くようにしています。

住まいの形でも変わります。マンションの高層階なら、停電でエレベーターが止まった状態を前提に、階段で水を運ぶ手段(キャリーカートやリュック型の給水袋)が要ります。戸建てなら、屋外の物置に分散して置ける利点があります。

在宅避難そのものの考え方や、備蓄を置く場所・回し方については在宅避難の基本ガイドにまとめました。あわせて読んでいただくと、リストの意味がつながると思います。

よくある質問

カセットボンベは何本必要?

1人1週間あたり約6本が公的な目安です。二人暮らしで12本、4人家族で24本。ただしこれは3食すべてを調理する前提の数字なので、実際の使い方で調整して構いません。お湯を沸かしてレトルトやカップ麺を食べる中心なら、半分の本数でも足りることが多いです。

気温が低いとボンベ内の圧力が下がって火力が落ちるため、真冬は同じ調理でも消費が増えます。寒い地域にお住まいなら、目安より少し多めに見ておいてください。使用期限は製造から約7年。鍋料理や卓上焼肉で普段から古いものを消費して、その都度買い足すのがいちばん無理のない回し方です。

マンションだと何を足すべき?

マンションで在宅避難をする場合、戸建てと決定的に違うのは水とトイレの扱いです。

まず給水。多くのマンションはポンプで各階へ水を送っているため、停電すると断水していなくても蛇口から水が出なくなります。そしてエレベーターも止まります。1階の給水所から水を運ぶ手段——折りたたみのキャリーカートや、背負えるタイプの給水バッグを用意しておくと、この負担がかなり違ってきます。水は1リットルで1kg、20リットル運べば20kgです。

もう一つがトイレです。地震のあと、建物の排水管が無事かどうか確認できるまでは水を流してはいけません。上の階で流した水が、下の階の破損部分から室内にあふれる事故が起こりうるからです。管理組合や管理会社から「排水使用可」の確認が出るまでは携帯トイレで対応する、と決めておくのが安全です。マンション住まいの方ほど、携帯トイレの備蓄回数を多めに見ておく価値があります。

7分野を一度に完璧にそろえる必要はありません。今日できるのは、水を1ケース多めに買うことと、携帯トイレを1袋注文すること。それだけでも、次の週末の自分は少し楽になります。あとは買い物のついでに1品ずつ。なお、備蓄品の推奨量や支援の枠組みは自治体によって違いがあるので、最終的な数量はお住まいの自治体の防災ページで確認してください。

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