「防災士って、どのくらい難しいんだろう」——講座の申し込みボタンの前で手が止まる方は多いと思います。結論から言えば、防災士試験の難易度は資格試験のなかではかなり低い部類です。ただし「誰でも受かる」わけではなく、落ちる人には共通点があります。この記事では、合格率の実数、試験の形式と合格ライン、必要な勉強時間の目安、そして落ちる人のパターンと対策を順に整理します。
結論:難易度は低め、ただし油断で落ちる人はいる
防災士試験は、2日間の研修講座をきちんと受け、教本に一度目を通していれば合格できる水準の試験です。受験資格に学歴や実務経験の制限はなく、年齢の下限もありません。小学生の合格者もいますし、定年後に取る方も大勢います。難関資格を突破するような勉強量は必要ありません。
それでも毎年、数パーセントの不合格者が出ます。理由はシンプルで、「研修に出れば自動的にもらえる資格」だと思って準備をしないまま当日を迎えるからです。防災士は研修と試験がセットになった民間資格で、研修の受講だけでは認証されません。試験の点数が足りなければ、当日その場で不合格になります。
難しいのは試験そのものではなく、「試験がある」と認識して準備に取りかかることのほうです。
私が防災の勉強を始めたときも、いちばん時間がかかったのは知識の暗記ではなく、分厚い教本を開く最初の一日でした。逆に言えば、そこさえ越えれば見通しは一気に良くなります。
合格率から見る難易度
日本防災士機構が公表している集計では、2025年度の合格率は91.9%、2024年度は91.8%でした。9割を超える水準が続いており、10人受ければ9人が受かる計算です。年度による大きなブレもありません。
この数字が示すのは、試験が受験者をふるい落とすためのものではないということです。防災士制度は、地域や職場で防災の担い手を増やすことを目的にしています。認証登録者は2026年7月末時点で36万人を超えました。人数を絞る設計になっていないので、合格率は自然と高くなります。
ただし、9割という数字の裏返しに目を向けてください。受験者の1割弱は落ちています。しかも受験者の多くは、数万円の受講料を払い、2日間を空けて研修に参加した人たちです。それだけの投資をした人の中から不合格者が出ているという事実は、「何もしなくても受かる」という理解が誤りであることを示しています。
年度ごとの推移や、他の防災系資格との合格率比較は防災士試験の合格率の記事で詳しく扱っています。数字の背景を確認したい方はあわせてどうぞ。

試験の形式と合格ライン
試験の形式は決まっていて、事前に把握しておくだけで気持ちがずいぶん楽になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題数 | 30問 |
| 形式 | 三者択一のマークシート |
| 試験時間 | 50分 |
| 合格ライン | 8割(24問正解) |
| 出題範囲 | 防災士教本と研修講座の内容 |
| 実施タイミング | 研修講座の最終日 |
注目すべきは合格ラインです。三択で30問なのに、間違えられるのは6問まで。三択だから当てずっぽうでも3割は当たる、という考え方は通用しません。6割や7割で合格になる試験と比べると、意外に余裕がないラインです。難易度が低いと言われるのは、問題が易しいからであって、基準がゆるいからではありません。
出題は教本と講義の範囲から出ます。ひっかけや重箱の隅をつつく問題は基本的になく、講義で「ここは大事です」と言われた箇所が素直に問われます。50分で30問なので、時間が足りなくなることもまずありません。
三択で8割。「なんとなく」で選ぶ問題を6問以内に抑えられるかどうかが分かれ目です。
必要な勉強時間の目安
準備にかける時間は、合計10〜20時間程度を見ておけば十分です。内訳としては、事前課題の履修確認レポートに5〜10時間、直前の復習に3〜5時間、講義中に印をつけた箇所の見直しに2〜3時間といったところです。2日間の研修そのものが12時間前後あるので、それを含めればかなりの時間を防災の学習に使うことになります。
まとまった時間が取れない場合は、教材が届いてから研修当日までの3〜4週間を使って、1日30分ずつ進めるやり方が続きます。教本は300ページ超のボリュームがありますが、全編を暗記する必要はありません。レポートで問われた箇所と、講義で強調された箇所に絞れば、対象はぐっと狭くなります。
すでに防災に関心があって、ハザードマップや避難情報の仕組みを普段から見ている方なら、もっと短くて済みます。逆に、防災の言葉に触れるのが初めてという方は、用語に慣れるぶんの時間を少し多めに見てください。「特別警報」「避難指示」「要配慮者」といった言葉が自然に頭に入るまでが、いちばん時間がかかるところです。
落ちる人の特徴と対策
不合格になる人のパターンは、大きく2つに分かれます。どちらも「試験を軽く見た」ことに起因します。
履修確認レポートを軽く見る
研修の3〜4週間前に教材一式が郵送され、そこに事前課題の履修確認レポートが同封されています。防災士教本を読みながら設問に答え、研修初日に提出する形式です。これを「提出さえすればいい書類」と考えて、答えを探して書き写すだけで済ませてしまう人がいます。
このレポートは、実質的に試験範囲の予告です。レポートで問われている論点は、試験でも問われる可能性が高い。逆に言えば、レポートに真面目に取り組むだけで、必要な準備の大半が終わります。締め切り直前に慌てて埋めるのではなく、教材が届いた週から少しずつ進めてください。
レポートが未提出だと研修そのものを受けられない場合があります。提出は必須の手続きとして扱ってください。
教本を読まずに研修だけで挑む
もう一つは、「2日間の講義を聞けば頭に入るだろう」と考えて、教本を開かないまま当日を迎えるパターンです。研修は朝から夕方まで詰まっていて、扱う分野も地震・風水害・火山・避難所運営・救急救命・地域防災計画と広く、講師も回ごとに替わります。初見の内容を聞き続けると、2日目の午後には集中力が持ちません。
対策は難しくありません。一度でも教本に目を通しておけば、講義は「知っている話の確認」に変わります。全部を読み込む必要はなく、見出しと太字だけ拾って全体像をつかんでおくだけでも効果があります。
この2つを避けられれば、落ちる要素はほとんど残りません。

効率的な勉強法:過去問と教本の使い方
防災士試験には、公式に配布される過去問題集がありません。実施団体が問題を公開していないためです。そのため、市販の問題集や研修機関が用意する練習問題を使うことになります。ここで押さえておきたいのは、過去問対策よりも教本と履修確認レポートの往復のほうが効くという点です。
私がおすすめする進め方は次の流れです。
教本の目次を見て、どんな分野が扱われるかを把握します。ここで細かく読み込む必要はありません。全体の地図を持つのが目的です。
設問ごとに該当ページを探し、その前後の数ページも一緒に読みます。答えだけ書き写すと記憶に残りません。
レポートで参照した箇所は、試験で問われる可能性が高い場所です。付箋やマーカーで見つけられるようにしておきます。
講師が繰り返す内容や、板書された数値は出題の候補です。教本の該当ページに直接メモします。
新しい範囲に手を出さず、印をつけたところだけを通します。1〜2時間で回せる分量になっているはずです。
この流れなら、教本を最初から最後まで通読しなくても、出題される可能性の高い箇所を自然に厚く復習できます。市販の問題集を使う場合も、解いて終わりにせず、間違えた設問を教本で確認する使い方に徹してください。
過去問の入手方法や、市販教材の選び方は防災士試験の過去問で整理しています。
ほかの資格と比べるとどれくらい?
合格率9割超という数字を、他の資格と並べてみます。
| 資格 | 合格率の目安 | 学習の性格 |
|---|---|---|
| 防災士 | 9割超 | 研修受講とセット。範囲は広いが浅い |
| 日商簿記3級 | 4割前後 | 独学で数十時間、計算演習が必要 |
| 危険物取扱者乙種4類 | 3割台 | 独学中心。暗記量が多い |
| 宅地建物取引士 | 1割台 | 数百時間の学習が前提 |
数字だけを見れば、防災士は資格試験というより「講習の修了確認」に近い位置づけです。ただ、性格が違うことも押さえておいてください。簿記や宅建は独学で合格を目指せる代わりに、試験に落ちれば失うのは受験料だけです。防災士は研修受講が必須で、費用も数万円かかります。落ちたときのコストの重さという意味では、油断できない試験です。
なお、資格取得の総額は受験料と認証登録料に加えて研修受講料がかかります。自治体が主催する養成講座では受講料の全額または一部を助成しているところもあり、その場合は自己負担がかなり下がります。お住まいの自治体の防災担当窓口に、助成制度があるかを先に聞いてみてください。金額や募集枠は年度ごとに変わります。
よくある質問
何日で取れる?
研修と試験そのものは2日間で終わります。ただし、資格として認証されるまでにはもう少しかかります。申し込みから教材到着まで数週間、事前レポートの作成に数週間、研修と試験で2日間、その後に救急救命講習の修了証を用意して、機構への認証登録申請という流れです。申し込みから認証まで、おおむね1〜2か月をみておくと実態に近くなります。
救急救命講習は消防署などが実施する3時間以上の講習で、研修とは別に受ける必要があります。ここを後回しにして登録が遅れる方が多いので、研修の日程が決まった時点で講習の予約も取っておくと流れが止まりません。
取得の全体像や費用の内訳は防災士資格の取り方にまとめています。
落ちたら再受験できる?
再受験できます。一度不合格になっても、資格取得の道が閉ざされるわけではありません。ただし、再受験には受験料が改めて必要になり、実施日程も限られます。研修をもう一度受け直す必要があるかどうかは、受講した研修機関の扱いによって変わるため、不合格の通知を受け取った時点で申し込み先に確認してください。
不合格になる人の大半は、実力不足ではなく準備不足です。教材が届いた日にレポートを開く——これだけで、再受験を考える必要はほぼなくなります。
防災士の難易度は、正しく準備した人にとっては低い試験です。合格率9割超という数字は、真面目に取り組んだ人が確実に報われる設計になっていることの表れでもあります。教本を丸暗記しようとしたり、市販の問題集を何冊も買い込んだりする必要はありません。届いた教材で、届いた分だけやる。それで足ります。
最新の日程・費用・実施機関については、日本防災士機構および各研修機関の公式サイトでご確認ください。
