防災リュックを買おうと検索すると、30点セット・50点セットが山のように出てきて、結局どれを選べばいいのか分からなくなります。この記事では、中身入りセットと自分で詰める方法のどちらが向いているか、容量と重さはどこを見ればいいか、そして買ったあとに何を足すべきかを順番に整理します。我が家(夫と二人暮らし、猫が一匹)で実際に用意して、玄関に置いて回してきた前提でお話しします。結論から言うと、迷っている時間があるなら中身入りセットを一つ買ってしまうのが早いです。
「中身入りセット」と「自分で詰める」どっちがいい?
防災リュックの用意には二通りあります。必要なものが最初から詰まったセットを買う方法と、手持ちのリュックに自分で中身を集めて詰める方法です。どちらが正しいということはなく、向き不向きがはっきり分かれます。
費用の目安は、2026年8月時点で中身入りセットが1人用でおおむね1万円台前半〜2万円台です。防災士監修をうたうものや保存食・保存水まで入る構成は2万円前後に集まります。自分で詰める場合は、リュックが手持ちなら中身だけで5,000〜10,000円ほどから始められます。価格は時期やセールで動くので、金額は目安として見てください。
私が人にすすめる分かれ目は単純です。「今まで一度も用意したことがない」なら、中身入りセットを買ってください。備えが止まる一番の理由は、お金でも知識でもなく「リストを見て面倒になる」ことだからです。すでに登山やキャンプ用のリュックがあって、防災用品もいくらか家にある人は、自分で詰めたほうが早く、無駄も出ません。
ゼロから始めるならセット、手持ちの装備がある人は自分で詰める。この一本で決めて構いません。

防災リュックの選び方:容量・重さ・背負いやすさ
製品ページには点数の多さが大きく書かれていますが、点数は選ぶ基準になりません。50点セットの中身には輪ゴムや軍手のような小物も一点として数えられています。見るべきなのは容量・重さ・背負いやすさ、それに水と食料が入っているかどうかです。
何リットルがいい?人数別の目安
一次避難、つまり地震や大雨の直後に家を出て数日をしのぐための荷物なら、大人一人あたり20〜30リットルが現場でよく使われている目安です。20リットルは登山でいう日帰り〜1泊分の容量にあたり、水・食料・簡易トイレ・ライト・衛生用品といった最低限が収まります。三越伊勢丹の法人向け解説や女性向けの選び方記事でも、20〜30リットルという同じ数字が示されています。
人数別に言い換えると、一人暮らしなら20〜25リットルで十分足ります。夫婦二人なら、二人用セット一つにまとめるより、20リットル前後を一人一つずつのほうが安全です。荷物を分けられますし、はぐれても両方が最低限を持っていることになります。子どもがいる家庭では、大人が30リットル前後を背負い、子どもには10リットル前後の軽いものを持たせる形が現実に回ります。子ども用は水と菓子、ライト、連絡先カードくらいで十分です。
40リットル以上の大容量リュックは、通販では「大容量でおすすめ」と並んでいますが、容量があると人は詰めてしまいます。詰めた結果、背負って階段を降りられないのでは意味がありません。在宅避難用の備蓄箱は別に用意して、持ち出しリュックは小さめに保つほうがうまくいきます。
背負える重さから考える:女性・子どもの場合
重さの目安として広く使われているのは、男性15kg・女性10kg、あるいは体重の2割以内という数字です。ただしこれは「持てる上限」であって、目標値ではありません。10kgは2リットルのペットボトル5本分です。夜、停電した屋外を、雨具を着て歩く前提で考えると、私は女性なら5〜7kg、高齢の家族には3〜4kgに抑えるべきだと考えています。
実際に量ってみると分かりますが、重さの大半は水です。500mlのペットボトルは1本で約0.5kg、これを4本入れれば2kgになります。ここで「水は多いほうが安心」と足していくと、あっという間に背負えない荷物になります。避難所や給水所で水は比較的早く手に入る一方、簡易トイレや常用薬は手に入りません。優先順位は、水の本数を増やすことより、トイレと薬と眼鏡です。
[check]買ったら一度、実際に詰めた状態で背負い、家の階段を上り下りしてみてください。ここで重いと感じたら、その時点で減らします。
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背負いやすさでは、胸の前で留めるチェストストラップと、腰で受けるウエストベルトの有無を見ます。この二つがあるだけで、肩にかかる負担がまるで違います。加えて、雨の中を歩く可能性を考えると防水・撥水生地であること、暗い中で車から見えるように反射材が付いていることも実用面で効きます。マイベストの比較でも、防水仕様かどうかで評価が明確に分かれていました。
おすすめの防災リュック
ここでは個別の型番を順位付けするのではなく、どういうタイプが誰に向くかという形で整理します。防災用品は毎年モデルが入れ替わりますし、在庫や価格も動くためです。
中身入りセットの定番どころ
通販で長く売れ続けているのは、アイリスオーヤマ、山善、ラピタ(LA・PITA)、防災防犯ダイレクトの「地震対策30点避難セット」といったあたりです。この四つは流通量が多く、レビュー件数も蓄積されているので、失敗しにくい選択肢だと思います。
選ぶときに必ず確認したいのが、水と食料が入っているかどうかです。同じメーカーでも「食品付き」と「食品なし」の型番が並んでいて、価格差の正体がそこにあります。安いと思って買ったら中身は懐中電灯とホイッスルと軍手だけ、というのはよくある話です。商品名の点数ではなく、内容一覧に保存水と保存食の記載があるかを見てください。
もう一つ、保存食・保存水の期限は5年、あるいは7年〜10年保存をうたうものがあります。期限が長いほうが手間は減りますが、そのぶん価格も上がります。我が家は「5年でいいから安いほう」を選んで、防災の日と年末に点検する習慣のほうに寄せました。
監修表示があること自体は悪くありませんが、誰がどこまで関与したかまでは書かれていないことがほとんどです。監修の有無で決めるより、水・食料・簡易トイレ・ライト・電源の五つが揃っているかで判断するほうが確実です。
リュック単体で選ぶなら
中身は自分で集めるからリュックだけ欲しい、という場合は、防災用と銘打った製品にこだわる必要はありません。実際、ワークマンの防水デイバッグのようなアウトドア・ワーク系のリュックは、防災リュックの候補としてよく挙がります。
単体で選ぶときの基準は三つです。20〜30リットルで、防水または撥水であること。チェストストラップとウエストベルトが付いていること。そして、口が大きく開くこと。上からしか手を入れられないタイプは、暗い中で底のものを探すのが本当に大変です。180度開くフルオープン型や、前面に大きなポケットがあるものだと、必要なものにすぐ届きます。
逆に、防災用として避けたほうがいいのは、片方の肩にかけるショルダーバッグと、キャリーケースだけの構成です。がれきや水たまりのある道でキャスターは転がりません。キャリー兼用リュックは、背負う機能がしっかりしているかを確認してから選びます。
手持ちのリュックを防災用にする方法
「普通のリュックで代用できますか」という疑問はとても多いのですが、答えは、条件を満たせば十分できる、です。むしろ普段使いで背負い慣れているリュックのほうが、体に合っている場合すらあります。ただし、通勤用の薄型ビジネスリュックだけは容量と生地の点で向きません。
20リットル以上あり、両肩で背負えるものを一つ選びます。旅行用やスポーツ用がちょうどいいことが多いです。中身は全部出して、専用にします。「兼用」にすると、いざというとき中身が抜けています。
飲料水500mlを2〜3本、簡易トイレ5回分程度、懐中電灯かヘッドライト、モバイルバッテリー、常用薬と眼鏡の予備。ここまでで避難直後の困りごとの大半に対応できます。
軍手、レインウェアかポンチョ、アルミの保温シート、マスク、ウェットティッシュ。夏と冬で足すものが変わるので、季節の変わり目に見直します。
小銭を含む現金、健康保険証や免許証のコピー、家族の連絡先を書いた紙、ホイッスル。スマートフォンが使えない前提で、紙で持ちます。
詰め終わったら背負って歩き、重ければ減らします。最後に玄関など、靴を履く場所のすぐそばに置きます。
この五段階なら、休みの日の午前中で終わります。すべてを一日で完璧に揃える必要はありません。1と2まで済ませて玄関に置けば、その時点で何もない状態からは確実に前進しています。

セットを買ったあとが本番:中身の見直しと足すもの
市販のセットは、誰にでも当てはまる最大公約数で作られています。だから、そのままでは必ず足りないものが出ます。買って玄関に置いた時点で終わりにせず、一度全部出して並べるところまでやってください。ここをやるかどうかで、備えの実用度がはっきり変わります。
セットに入っていないことが多く、かつ自分にしか用意できないものは決まっています。常用薬とお薬手帳の写し、眼鏡やコンタクトの予備、生理用品、入れ歯の洗浄剤、そしてペットのフードと薬です。我が家は猫がいるので、キャリーとフード、トイレ砂を別の袋にまとめて、リュックの隣に置いています。高齢の家族がいる家庭なら、大人用おむつや補聴器の電池も同じ扱いになります。
逆に、セットに入っていても使わなかったものもあります。何を減らせるかは実際に買って使わなかった防災グッズのほうに詳しくまとめました。中身の全体像をリストで確認したい方は防災リュックの中身リストを参照してください。
見直しの頻度は、年2回で十分です。9月1日の防災の日あたりと、年末の大掃除のときに、保存食と保存水の期限、乾電池の残量、モバイルバッテリーの充電を確認します。カレンダーやスマートフォンに繰り返しの予定として入れてしまうと、忘れません。点検は一回15分もあれば終わります。
ここまでできていれば、家庭の備えとしては十分に及第点です。防災用品は上を見ればきりがありませんが、玄関に背負える重さのリュックが一つあって、中身を年2回見ている——その状態を保つことが、高価なセットを買って押し入れの奥にしまうことよりずっと役に立ちます。
よくある質問
避難するかどうか、いつ動くかの判断そのものは、気象庁の防災情報とお住まいの自治体が出す避難情報に従ってください。この記事で扱ったのはあくまで持ち出す道具の話です。ハザードマップと避難場所は、備える側の準備として、リュックを用意するのと同じタイミングで自治体の公式サイトで確認しておくと、二度手間になりません。
なお、本文中の価格は2026年8月時点の通販での目安です。セールや在庫で変動するので、購入前に最新の価格をご確認ください。
