子どもと作る手作り防災グッズ|新聞紙スリッパから防災ボトルまで

新聞紙で折ったスリッパと手作りの防災グッズ

防災グッズは買い揃えるものだと思われがちですが、新聞紙やポリ袋、段ボールのように家にあるもので間に合う道具もあります。この記事では、新聞紙スリッパ・ポリ袋レインコート・段ボールトイレ・缶ランタン・100均の防災ボトルという定番の五つを、作り方と「どんな場面で使うのか」まで含めて紹介します。あわせて、手作りで代用しないほうがいいものの線引きもはっきりさせておきます。子どもと一緒に手を動かせば、それ自体が家庭の防災訓練になります。

目次

手作り防災の意味:作る過程が防災教育になる

手作り防災グッズの一番の価値は、できあがった品物そのものより、作る過程で「なぜこれが必要になるのか」を家族で共有できることにあります。新聞紙のスリッパは、割れたガラスが床一面に散らばった部屋を歩く場面を想像しないと、必要性がぴんときません。作りながらその話をすることが、そのまま我が家の防災訓練になります。

もうひとつ、災害のあとは物流が止まり、買いに行けなくなります。そのときに「家にあるもので何とかする」引き出しを持っているかどうかは、被災後の暮らしの質をかなり左右します。手作りの技術は、備蓄が尽きたあとの二段目の備えです。逆に言えば、備蓄そのものの代わりにはなりません。ここを取り違えないことが、手作り防災を実用に落とし込むコツです。

それと、子どもにとっては単純に楽しい作業です。防災の話は重くなりがちですが、工作としてなら前向きに取り組めます。年に一度、9月の防災の日あたりに家族で作る日を決めておくと、備蓄の点検と一緒に回せます。

新聞紙を折って作った簡易スリッパ

定番の手作り防災グッズ

まずは実用性が高く、材料も手に入りやすい四つを取り上げます。どれも特別な道具は要りません。

新聞紙スリッパ

地震のあとの室内は、割れた食器やガラス、倒れた家具の破片で足元が危険な状態になります。停電していれば暗くて破片も見えません。玄関まで数メートル歩くだけでも足を切る恐れがあるので、枕元に置く一足は、備えの中でもかなり優先順位が高い部類です。

作り方は見開きの新聞紙1枚で片足分。折り紙の要領で作れます。

STEP
1. 半分に折る

見開き1枚を横長に置き、下から上へ半分に折ります。厚みが欲しいときは新聞紙を2枚重ねて始めます。

STEP
2. 中心の折り筋をつける

左右半分に軽く折って中心線の筋をつけ、開いて戻します。

STEP
3. 上の角を三角に折る

上側の左右の角を中心線に合わせて折り、屋根のような三角を作ります。

STEP
4. 下から二度折り上げる

下の縁を三角の底辺に沿って折り上げ、さらにもう一度折り上げて三角の先端を包み込みます。ここが足の甲を押さえる部分になります。

STEP
5. 底を作る

裏返して左右を中心で重ね、かかと側の余りを内側へ折り込みます。足を入れてサイズを見ながら調整します。

文章だけだと折り方が分かりにくいので、実際に作るときは、自治体の防災ページで配布されている折り図を手元に置くのがおすすめです。多くの市区町村がPDFで公開しています。子どもと作るなら、この折り図を印刷して渡すと自分で進められます。

ただし新聞紙は水に弱く、履き心地も硬いので、長時間履くものではなく、その場をしのぐための一足と考えてください。避難生活が長引くなら、底のしっかりした室内履きや運動靴が要ります。

ポリ袋レインコート

45リットル以上の大きめのポリ袋の底の角を左右2か所切って腕を、閉じている辺の中央を切って首を通せば、かぶるだけのレインコートになります。切り込みは小さめから始めて、通しながら広げると失敗しません。雨をしのぐだけでなく、冬なら防寒着の上に重ねて風を防ぐ役目も果たします。

ポリ袋は防災用品の中でも用途が広く、給水袋の内袋、汚物の処理、荷物の防水と、何枚あっても困りません。厚手のものを何枚か非常持ち出し袋に入れておくと、現地で判断して使い道を決められます。

小さな子どもがポリ袋をかぶる遊びは窒息の危険があります。作るのも着るのも必ず大人が横についてください。

段ボールトイレ・仕切り

断水すると水洗トイレは使えなくなります。段ボール箱を二重にして座れる高さに補強し、上面をくり抜いて便座代わりにする方法は、簡易トイレが足りないときの現実的な代用です。中にポリ袋を二重にかけ、内側の袋に新聞紙やペットシーツを敷いて水分を吸わせ、使用後は内側の袋だけを縛って捨てます。

ただし段ボールは湿気で一気に弱ります。実際に体重をかけると、思っているより早くへたります。段ボールトイレはあくまで一時しのぎで、本命は市販の携帯トイレを人数分ストックしておくことです。目安は1人1日5回×最低3日分。四人家族なら60回分になります。

仕切りのほうは相性がいい使い方です。在宅避難でも、着替えや授乳のときにワンタッチで囲いを作れると気持ちがずいぶん違います。大きめの段ボールを蝶番のようにガムテープでつないでおけば、たたんで隙間に立てておけます。ペットのケージまわりの目隠しにも使えます。

缶ランタン・簡易ランプ

空き缶の側面に釘やキリで模様の穴を開け、中にLEDのミニライトを入れると、光がやわらかく広がるランタンになります。子どもが絵柄を考えられるので、工作としては一番人気が出やすいところです。缶の切り口や穴の縁は鋭いので、開ける作業は大人が担当し、ふちをテープで覆っておきます。

もう少し手軽なのは、水を入れた500mlのペットボトルの下から懐中電灯を当てる方法です。光が水に散って部屋全体がぼんやり明るくなります。停電時に一本の懐中電灯で家族が過ごすとき、この使い方を知っているだけで居間の暗さがかなり和らぎます。

ろうそくを使う手作りランプは作らない

火のついたろうそくは、余震で倒れれば火災になります。過去の地震でも、停電中の火気が出火につながった例が報告されています。停電時の明かりはLEDライトに統一してください。

ライトやホイッスルを詰めた手作りの防災ボトル

100均材料で作る防災ボトル

防災ボトルは、外出先で被災したときに数時間をしのぐための小さな備えです。2022年に警視庁警備部災害対策課が紹介して広まりました。空のドリンクボトルに、災害時に役立つ小物をまとめて入れておくというシンプルな発想です。

ボトルは500ml前後の広口タイプが詰めやすく、100円ショップで手に入ります。中身も同じ店でおおむね揃うので、全部で1,000円前後、買い物から詰め終わりまで1時間ほどで完成します(価格は2026年8月時点の目安です)。

入れるものの定番は、ミニLEDライト、ホイッスル、圧縮タオル、アルコール消毒綿、絆創膏、エチケット袋、ポリ袋、油性ペン、あめや羊羹などの小さな食べ物、そして小銭です。公衆電話は停電時も使えることがあるので、10円玉と100円玉を数枚入れておくと役に立ちます。常備薬がある人は、それを最優先で入れてください。

詰めるときのコツは、大きいものから順に入れ、細かいものは小袋にまとめること。子ども用に作るなら、ライトとホイッスル、名前と連絡先を書いたメモ、好きなお菓子を入れて、軽く仕上げます。ホイッスルは首から下げず、ボトルの中に入れておくのが安全です。

作ったら中身を写真に撮っておくと、次の点検のときに何が減ったか一目で分かります。

中身の選び方や、100円ショップで買えるもの・買わないほうがいいものについては、100均で揃う防災グッズで詳しく整理しています。防災ボトルの材料集めもそちらを見ながら進められます。

作りながら話したい「なぜ必要?」

作業中の会話が、この取り組みの本体だと思っています。手が動いているときの子どもは、正面から防災の話をするより素直に聞いてくれます。

新聞紙スリッパを折りながら「地震で食器棚が倒れたら、床はどうなると思う?」と聞いてみる。ポリ袋レインコートを着せながら「体が濡れて風に当たると、夏でも体が冷えて動けなくなるんだよ」と伝える。段ボールトイレを組み立てながら「水道が止まったらトイレの水はどこから持ってくる?」と一緒に考える。答えを教えるより、質問して考えてもらうほうが記憶に残ります。

このときに、連絡が取れなくなった場合の集合場所と、避難場所までの道順も確認しておいてください。避難場所や避難経路は自治体のハザードマップで確認するのが基本で、警戒レベルや避難情報の意味は内閣府や気象庁のページに整理されています。工作の日は、そうした一次情報をみんなで開いてみる口実にもなります。

自由研究・工作イベントにするなら

夏休みの自由研究にするなら、作って終わりではなく、「試して、記録する」ところまで入れると一気に研究らしくなります。新聞紙スリッパなら、1枚で作ったものと2枚重ねで作ったものを履き比べて、何歩で破れたかを数える。缶ランタンなら、穴の数や大きさを変えて、どれが一番明るく見えたかを写真で比べる。ペットボトルランタンなら、水だけの場合と少し牛乳を混ぜた場合で光の広がりがどう変わるかを見る。

まとめ方は、作った理由・材料と費用・作り方・試した結果・分かったこと、の順で並べれば形になります。費用を書くと、備えにいくらかかるかという生活の感覚も一緒に身につきます。

地域の防災イベントで作る場合は、刃物と缶の切り口の扱いだけ役割をはっきり決めておくと安全です。穴あけは大人、装飾は子ども、という分け方が無理がありません。

ここまでできれば十分です。全種類を一日で作りきる必要はなく、今年は新聞紙スリッパと防災ボトル、来年は段ボールトイレ、というくらいの間隔でも、家族の記憶には十分残ります。

手作りで済ませないほうがいいもの

手作りは万能ではありません。命や衛生に直結するものは、代用品で粘らずに買っておくべきです。ここを混同すると、備えたつもりで実際には守られていない状態になります。

手作り・代用でよいもの買っておくもの理由
室内用スリッパ(新聞紙)底の厚い運動靴・スリッパ新聞紙は水と摩耗に弱く、長く歩けない
雨よけ(ポリ袋)レインウェア・防寒具長時間の雨風と低体温には力不足
トイレの囲い・便座台(段ボール)携帯トイレ・凝固剤排泄物の処理は衛生に直結し、代用が効かない
ランタンの覆い(空き缶)LEDライト・電池・モバイルバッテリー光源と電源そのものは自作できない
間仕切り(段ボール)ヘルメット・防災ずきん落下物から頭を守る性能は規格品でないと担保できない

特に注意したいのがヘルメットです。新聞紙や段ボールで作る「かぶりもの」は工作としては楽しくても、落下物に対する保護性能はありません。頭を守る道具は、産業用ヘルメットの規格に適合した製品か、市販の防災ずきんを選んでください。水も同じで、備蓄量そのものは工夫では減らせません。1人1日3リットル×最低3日分が基準です。

何を優先して買い揃えるかは、本当に必要な防災グッズにまとめています。手作りできるものを差し引いて考えると、買うものはかなり絞り込めます。

よくある質問

何歳から一緒に作れますか?

折る・詰める作業なら4〜5歳から参加できます。新聞紙スリッパの折り方は小学校低学年で自分で完成させられる子が多く、防災ボトルの詰め込みは未就学児でも楽しめます。缶に穴を開ける、段ボールをカッターで切るといった刃物を使う工程は、小学校高学年でも大人が手を添えてください。年齢よりも、その子が刃物と缶の切り口を扱えるかどうかで線を引くのが確実です。

作ったものはどこにしまえばいいですか?

使う場所の近くが原則です。新聞紙スリッパは寝室の枕元かベッド下、防災ボトルは玄関か通勤・通学カバンの中、段ボールの仕切りは押し入れの隙間に立てて。非常持ち出し袋の底にまとめて入れると、いざというときに取り出せません。新聞紙は湿気を吸うので、スリッパは作り置きせず、折り図だけ枕元に置いて必要なときに折る方法もあります。

手作りしたものはどのくらいで作り直しますか?

新聞紙や段ボールの品は年1回、防災の日あたりに点検して、湿気ているものやへたっているものを作り直します。防災ボトルは中身の消費期限とライトの電池が管理の対象になるので、同じタイミングで食べ物と電池を入れ替えてください。備蓄の点検日と揃えておくと、年に一度で全部回ります。

手作りできるものと、買うしかないもの。この線引きさえはっきりしていれば、手作り防災は「楽しくて役に立つ備え」になります。今年の休日に一つ、新聞紙スリッパから始めてみてください。

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