防災グッズで本当に必要なものはどれ?家庭目線の厳選リストと優先順位

水と携帯トイレ、ランタンを並べた家庭の防災グッズ

防災グッズの記事を読むと、たいてい30品目も40品目も並んでいて、読み終わるころには「うちには無理だ」となってしまいます。実際に必要なものは、もっと少なく、順番もはっきりしています。この記事では、水・トイレ・明かりを軸にした「本当に必要な10品」を優先順位つきで整理し、あわせて経験者が役に立ったと答えるもの、逆に使わなかったもの、家族構成で変わる部分までまとめました。今日1時間で終わる最初の一歩まで書いています。

目次

「全部そろえる」は挫折のもと 必要なものは意外と少ない

防災グッズが続かない一番の理由は、最初から完璧を目指すことです。リストを印刷して、上から順に買おうとして、3つ目あたりで「これ本当にいる?」と手が止まる。そのまま半年経つ——という話は、家計の相談でも本当によく聞きます。

順番を決めるコツは、災害そのものではなく「災害のあとに家で起きること」から考えることです。大きな地震や台風で家が無事だった場合、多くの家庭が直面するのは倒壊ではなく、停電・断水・トイレが流せない状態が数日続くことです。避難所へ行く人よりも、自宅にとどまる人のほうが多い。だから、非常持ち出し袋の中身を一生懸命考えるより先に、家の中で数日暮らせるかを見たほうが効きます。

備えの順番は「持ち出す準備」より「家で耐える準備」が先です。

この考え方でいくと、必要なものはぐっと絞れます。次の章の10品がそろっていれば、家庭の備えとしてはまず合格点です。そこから先は、余裕ができたときに足していけば間に合います。

優先順位順に並べた水・缶詰・ラジオなどの備蓄品

本当に必要な防災グッズ10(優先順位つき)

優先順位は「なくなると一番早く困るもの」の順です。上から順に買って、途中で止まっても意味があるように並べています。金額は2026年8月時点で一般的な通販・ホームセンターで見かける価格帯の目安で、時期やセールによって変わります。

順位もの量の目安(大人2人)費用の目安
1飲料水2L×9本(3日分)1,500〜2,000円
2携帯トイレ30〜50回分2,000〜4,000円
3食料(普段食べるもの)3日分3,000〜5,000円
4明かり(LEDランタン等)2〜3個2,000〜4,000円
5モバイルバッテリー1人1台3,000〜6,000円
6電池式ラジオ1台2,000〜4,000円
7カセットコンロとボンベ本体+6〜9本4,000〜6,000円
8衛生用品(ウェットティッシュ・ポリ袋等)まとめ買い1式1,500〜3,000円
9常備薬と救急セット1式1,500〜3,000円
10現金と書類のコピー小銭中心で1〜2万円

水・食料はまず3日分

水は、飲用と調理に使う分として1人1日3リットルが目安です。農林水産省の家庭備蓄の案内でも、最低3日分、可能なら1週間分とされています(農林水産省「大事な水、どうやって備えますか?」)。大人2人なら3日で18リットル、2リットルのペットボトル9本です。想像より少なく、玄関収納の下段に入ります。

いきなり1週間分(2人で42リットル)を置ける家は多くありません。まず3日分を確保して、置き場所に余裕があれば買い足す。この順番で十分です。なお、トイレを流したり体を拭いたりする生活用水は、この3リットルには含まれません。お風呂の残り湯を洗濯前まで抜かずに置いておくだけでも違います。

食料は、長期保存の非常食を買い込むより、普段食べているものを少し多めに買って、古いものから使って買い足す「ローリングストック」のほうが続きます。レトルトごはん、カップ麺、缶詰、レトルトカレー、それに好きなお菓子。停電中はお菓子の存在がずいぶん効きます。賞味期限が5年ある非常食は、5年後に確実に忘れているというのが正直なところです。

トイレは「回数」で考える

備えのなかで、いちばん軽視されていて、いちばん切実になるのがトイレです。断水していなくても、集合住宅では配管の点検が済むまで水を流せないことがあります。水が出るかどうかとトイレが使えるかどうかは、別の問題です。

備える量は日数ではなく回数で計算します。内閣府の避難所のトイレに関するガイドラインでは、1人1日5回を目安に確保計画を立てることが示されています(内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」)。大人2人なら1日10回、3日で30回分、1週間なら70回分です。数字にすると、市販の「20回分セット」ひとつでは足りないことがすぐ分かります。

携帯トイレは「セット数」ではなく「合計回数」で足りているか数えてください。

選ぶときは、凝固剤と防臭袋がセットになっているものが扱いやすいです。使い方や置き場所、においの対策は災害時のトイレ対策をまとめた記事で詳しく書いています。備蓄のなかで、費用対効果がもっとも高いのはここだと思っています。

明かり・情報・電源

停電時にまず困るのは、暗さです。懐中電灯は一方向しか照らせないので、部屋で過ごすならLEDランタンのほうが実用的です。理想は、リビング・寝室・トイレに1つずつ。夜中に手探りで探すことがなくなります。

情報は、スマホと電池式ラジオの二本立てにします。スマホが使えるうちはスマホで足りますが、基地局が止まったり充電が尽きたりすると一気に無音になります。ラジオはそのときの保険で、普段は使わなくてかまいません。電池は本体と別に、新品を1セット。

電源は、まずモバイルバッテリーを1人1台です。スマホを2〜3回充電できる容量(10,000mAh前後)があれば、数日はしのげます。ポータブル電源は、あれば快適ですが最初の1台ではありません。冷蔵庫や医療機器を動かしたい、在宅避難を本気で想定する、キャンプでも使う——そういう理由が出てきてから検討する順番でよいと思います。

衛生用品と救急セット

断水中はお風呂に入れません。体拭きシート、ドライシャンプー、歯みがきシート、それにウェットティッシュ。この4つがあると、衛生面のストレスがかなり下がります。ポリ袋(45L・小さめの両方)とラップも入れておいてください。ラップは食器にかぶせれば洗い物が減り、ポリ袋は汚物の処理から防寒まで幅広く使えます。

救急セットは市販のものでかまいませんが、常備薬と持病の薬だけは自分で足す必要があります。血圧の薬、痛み止め、目薬、湿布。処方薬を飲んでいる家族がいるなら、お薬手帳の写真をスマホに入れておくと、避難先や薬局でのやりとりが早く済みます。

現金と書類のコピー

停電すると、キャッシュレス決済もATMも止まります。実際に、レジが手打ちになって現金しか受け付けなくなった店は各地で出ました。1万円札だけ持っていてもお釣りが出ないので、千円札と小銭を中心に、2人で1〜2万円ほど分けて置いておきます。公衆電話用の10円玉も少し混ぜておきます。

書類は、保険証・運転免許証・通帳の見開きをコピーするか、スマホで撮影してクラウドに入れておきます。罹災証明や保険の請求で必要になる場面があり、家が使えない状態でも手元に情報が残ります。

経験者が「実際に役立った」と答えたもの

被災経験のある方の話で共通して出てくるのは、意外と地味なものばかりです。上位に来るのは、携帯トイレ、モバイルバッテリー、ウェットティッシュ、ポリ袋、そしてカセットコンロ。どれも「非常用」という顔をしていない、日用品の延長にあるものです。

カセットコンロは特に評価が高い道具です。ガスが止まってもお湯が沸かせるだけで、食べられるものの幅が一気に広がります。冷えた体に温かい飲み物が入るかどうかは、体調にも気持ちにも響きます。ボンベは1本で1時間ほど使える計算なので、3日分なら6〜9本。カセットボンベは高温になる場所を避け、直射日光の当たらないところで保管してください。

もうひとつ、忘れられがちなのが履き物です。地震で窓ガラスが割れると、床は素足で歩けません。寝室のベッドの下にスリッパかスニーカーを1足置いておく——費用はゼロで、けがを防ぐ効果は大きい備えです。

ペットのいる家庭では、フードと水、いつも使っているトイレ砂、そしてキャリーケースが最優先になります。我が家も猫がいるので、フードは常にひと袋多く買い、キャリーは押し入れの奥ではなく取り出せる場所に置いています。避難所によってはペットの受け入れ方が異なるため、在宅で過ごす前提の備えが現実味を持ちます。

反対に「いらなかった」という声が多いもの

正直に書くと、防災セットとして売られているものの中には、ほとんど使われないまま期限を迎える品もあります。よく挙がるのは、次のようなものです。

ヘルメット以外の防災頭巾、大型のバール、10徳ナイフのような多機能ツール、乾パン、そして中身が分からない詰め合わせの防災セット。乾パンは「食べ慣れていないうえに水がないと飲み込みにくい」という理由で残されがちです。手回し充電ラジオも、実際に回してみると数分回して数分通話できる程度で、メインの電源にはなりません。持っていてよい道具ですが、モバイルバッテリーの代わりにはなりません。

大容量をうたう格安のポータブル電源は、PSEマークと保証年数、実測容量の表記を確認してから選んでください。

詰め合わせの防災セットは、中身を一度全部出して、使わないものを抜き、足りないものを入れるところまでやって初めて役に立ちます。買った箱をそのままクローゼットに入れている状態が、いちばんもったいない。編集部で実際に買って使わなかったものは防災グッズでいらなかったものの記事にまとめています。

家族構成で変わる必要なもの:女性・子ども・高齢の家族

10品は共通の土台で、ここから先は家族に合わせて足します。足すのは数点で足ります。

女性の場合、生理用品は「そのとき困らない量」ではなく、1周期分をまとめて備えておきます。避難所や支援物資では希望のタイプが手に入るとは限らず、サイズ違いで困ったという話もよく聞きます。あわせて、着替えるときに使える大きめのバスタオルやポンチョ、下着の替えを2〜3日分。防犯ブザーも、避難所生活や夜間の移動を考えると持っていて損はありません。

子どものいる家庭では、月齢によって必要なものが大きく変わります。乳児ならミルク(液体ミルクは常温でそのまま飲ませられます)、使い捨て哺乳ボトル、おむつ、おしりふき。幼児から小学生なら、お菓子と、絵本やトランプなど手を動かせるもの。停電で不安な夜を過ごすとき、退屈をしのげるものは想像以上に効きます。名前と連絡先を書いたカードをランドセルや上着に入れておくのも簡単な備えです。

高齢の家族には、常備薬とお薬手帳の控え、予備の眼鏡、入れ歯洗浄剤、大人用おむつや尿とりパッド。それに、避難生活で足腰が弱りやすいことを考えると、履き慣れた靴と杖の予備も現実的な備えになります。持病がある場合は、かかりつけ医の連絡先と処方内容を紙に書いて、水に濡れないようにして財布に入れておくと、離れて暮らしていても伝わります。

玄関収納にまとめて置かれた防災用品の収納ボックス

そろえる順番:今日できる最初の一歩

ここまで読んで「結局どれから」と思われた方へ。最初の1時間でできることを、順番に並べます。買い物に出るのは3番目で十分です。

STEP
1. 家にあるものを数える(15分)

まず買わずに数えます。ペットボトルの水は何本あるか、カップ麺と缶詰は何食分か、乾電池はあるか、モバイルバッテリーは充電されているか。この時点で「3日分そろっていた」という家庭は少なくありません。

STEP
2. 足りない分をメモにする(10分)

大人2人なら水18リットル、携帯トイレ30回分、食料3日分が最初の目標です。数えた結果との差を書き出します。買うものは、たいてい3〜4品に収まります。

STEP
3. 水と携帯トイレだけ先に買う(30分)

全部まとめて買おうとすると金額に驚いて手が止まります。まず水と携帯トイレの2つだけ。合わせて4,000〜6,000円ほどで、家庭の備えの半分が終わります。

STEP
4. 置き場所を決めて、使う日を決める(5分)

玄関に近い収納にまとめ、水と食料は「賞味期限が来たら食べる」ではなく「半年に一度、意識して食べる日を決める」。防災の日(9月1日)と年末の2回にすると忘れません。

ここまでやれば、家庭の備えとしては十分です。ポータブル電源も、非常持ち出し袋の細かい中身も、そのあとで構いません。品目ごとの数量と置き場所は防災グッズのチェックリスト記事に一覧でまとめてあるので、買い足しのときに使ってください。

最初の1回で完璧にしないこと

備えは、年に2回の点検で少しずつ増えていくものです。今日そろえた3品が、来年には7品になっていれば十分です。増やすことより、期限切れに気づける状態を保つことのほうが大事です。

よくある質問

備えを始める方から特によく聞かれることに、順番に答えます。

防災グッズで本当に必要なもののトップ10は?

飲料水、携帯トイレ、食料、明かり、モバイルバッテリー、ラジオ、カセットコンロとボンベ、衛生用品、常備薬と救急セット、現金と書類のコピーの10品です。上から順に「なくなると早く困る順」に並んでいるので、途中まででも意味があります。

一番必要なものを1つ挙げるなら?

携帯トイレです。水や食料は近所の店や支援である程度カバーできますが、トイレは我慢がきかず、代わりもききません。大人2人なら3日で30回分が目安です。

何も用意していないとどうなる?

停電と断水が同時に起きると、明かり・情報・トイレ・調理の4つが一度に止まります。断水すると水が出ないだけでなく、トイレが流せなくなるのが一番こたえます。買い物に出ても、災害直後は水と電池と携帯トイレから売り切れます。だからこそ、平常時に水と携帯トイレだけでも先に置いておく価値があります。

なお、自宅がどんな災害リスクを抱えているか(浸水、土砂、揺れやすさ)は地域によってまったく違います。備える量や、そもそも在宅避難でよいのかの判断が変わるので、お住まいの自治体が公開しているハザードマップと避難所情報は一度ご確認ください。この記事の数値の目安は2026年8月時点のもので、価格は時期によって変わります。

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