非常食を買い足そうとして、「3日分」と「1週間分」の両方を見かけて手が止まった方は多いと思います。どちらも根拠のある数字ですが、想定している場面が違います。この記事では、その二つの数字がどこから来ているのかを整理したうえで、家族の人数ごとに何食・水は何リットル必要かを具体的に計算します。冷蔵庫の中身を日数に数えていいのか、ペットの分をどう見るのかも最後にまとめました。
結論の前に:なぜ「3日分」と言われるのか
3日という数字は、食べ物が3日でなくなるという意味ではありません。大きな災害が起きた直後は、消防・警察・自衛隊の力が人命救助に集中します。がれきの下からの救出は時間との勝負で、おおむね72時間を境に生存率が大きく下がるとされているためです。つまり最初の3日間は、公的な支援の手が食料配布まで回ってこない前提で考える必要があります。
さらに、支援物資そのものが3日以上届かないことや、物流が止まってスーパー・コンビニで食品が買えない状態が続くことも想定されています。3日分は「助けが来るまで自分の家でしのぐ最低ライン」と受け止めるのが、いちばん実態に近い理解です。
ですから3日分は目標ではなく、出発点です。ここが空っぽの状態でポータブル電源や高機能な防災グッズを検討するより、まず3日分の食料と水を埋めるほうが効きます。
政府・自治体の推奨は何日分?考え方の整理
農林水産省は「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド」で、最低3日分、できれば1週間分の食料品と水を家庭で持っておくよう案内しています。過去の災害では、ライフラインの復旧に1週間以上かかった例が多く見られたためです。政府広報オンラインでも、普段の食品を多めに買い置きして使った分だけ買い足すローリングストックが、実践しやすい方法として紹介されています。
自治体の案内は、地域の事情によって幅があります。都市部では在宅避難を前提に3日分以上を求める内容が多く、南海トラフ地震の影響が大きいとされる地域では1週間分を明記している自治体もあります。どちらが正しいというより、住んでいる場所の被害想定に合わせて日数が決まっている、と考えると迷いません。
まず3日分をきっちり埋める。そのうえで1週間分へ伸ばす。この順番が、家計にも収納にもいちばん無理がありません。
南海トラフ想定で「1週間分」が語られる理由
1週間という数字が出てくるのは、被災地が広い範囲におよぶ災害を想定しているからです。南海トラフ地震のように複数の県が同時に被災すると、支援する側の自治体も被災しているため、物資も人手も分散します。国の推進基本計画でも、家庭の備蓄として1週間分以上が求められています。
もうひとつは、インフラ復旧の時間です。電気は比較的早く戻ることが多い一方、上下水道の応急復旧には長い期間が見込まれています。水が出なければ、調理も洗い物もトイレも普段どおりにはいきません。食料より先に水の備えが尽きるというのが、実際の被災地でくり返し起きていることです。
「1週間分」は全部を非常食で揃える意味ではありません
非常食(アルファ米・長期保存パン)だけで1週間をまかなおうとすると、費用も収納も跳ね上がります。3日分までは非常食中心、4日目以降は普段食べているレトルト・缶詰・乾麺の買い置きで埋める。この分け方なら、家計への負担がぐっと軽くなります。

家族人数別に量を計算する
日数が決まったら、次は量です。計算の土台になるのは「1人1日あたり」の数字だけで、あとは人数と日数をかけるだけになります。大人1人の1日分は、主食3食・主菜2〜3品・汁物やスープ1品、そして水3リットル。これを基準に置きます。
子どもの分は、小学生以上なら大人と同じで見ておくほうが安全です。未就学児は主食を大人の半分〜7割程度に見積もり、そのぶんお菓子やゼリー飲料など、食べ慣れたもので補います。避難生活では食が細くなりやすく、いつも食べているものかどうかが、量より効いてきます。
大人2人+子ども2人の3日分の例
4人家族(子どもは小学生とします)で3日分を計算すると、次のようになります。
| 品目 | 1人1日の目安 | 4人×3日分 | 買い方の例 |
|---|---|---|---|
| 主食 | 3食 | 36食 | パックごはん20食+アルファ米10食+乾麺・カップ麺6食 |
| 主菜(缶詰・レトルト) | 2〜3品 | 24〜36品 | サバ缶・焼き鳥缶・カレー・牛丼の具など |
| 汁物・スープ | 1品 | 12品 | インスタント味噌汁・スープ |
| 水 | 3L | 36L | 2Lペットボトル18本(6本入り3箱) |
| カセットボンベ | 約0.9本 | 10本前後 | 3本パック×3〜4 |
カセットボンベは、農林水産省のガイドが1人1週間あたり約6本を目安としています。4人家族の3日分に置き換えると10本前後です。多く感じるかもしれませんが、湯を沸かす・レトルトを温める・スープを作ると、1本はあっという間になくなります。カセットコンロがなければ、ここだけは食料より先に用意する価値があります。
主食の食数は、朝昼晩の3食で数えます。パックごはんは1食200gが基本サイズなので、「1パック=1食」で計算して問題ありません。
1週間分にするとどれくらい増える?
同じ4人家族で7日分にすると、主食84食、主菜56〜84品、水84リットル、カセットボンベ24本前後になります。水は2Lペットボトル42本、6本入りの箱で7箱です。段ボール7箱ぶんの置き場所を先に決めておかないと、買っても続きません。
ここで効いてくるのが、4日目以降を普段の食品でまかなう考え方です。パスタ1袋(500g)で5食前後、そうめん1袋で数食、切り餅1パックで数食と、乾物は1袋あたりの食数が多く、収納の効率がいいのが強みです。パスタとレトルトソース、乾麺とめんつゆ、切り餅と缶詰。この組み合わせを普段の買い物で少し多めに持っておくだけで、日数はかなり伸びます。
我が家は夫と二人暮らしですが、7日分の水(42L)を一か所にまとめるのは無理でした。玄関に2箱、寝室のクローゼットの下に2箱、台所の床下に残りと、分散させています。置き場所が分かれていると、家具が倒れて一部屋が使えなくなったときの保険にもなります。

水とセットで考える
非常食の日数だけ先に決めても、水がなければ食べられません。アルファ米は水かお湯が要りますし、乾麺は大量の湯を使います。日数を伸ばすときは、食料と水を必ず同じ日数で揃えてください。
1人1日3リットルという目安は、飲み水として1.5〜2リットル、残りが調理用という内訳です。これに加えて、手を洗う・食器をゆすぐ・歯を磨くといった生活用水が別に必要になります。飲料水のペットボトルとは別に、風呂の残し湯やポリタンクで生活用水を確保しておくと、飲料水の減りが目に見えて緩やかになります。
水の選び方や保存期間、生活用水の確保のしかたは水の備蓄は何リットル必要かで詳しくまとめています。非常食の量が決まったら、続けて読んでみてください。
3日分から1週間分へ無理なく増やす順番
一気に1週間分を買い揃えると、数万円が一度に出ていき、期限管理も同じ時期に集中します。次の順番なら、月々の食費の中に溶かし込めます。
2Lペットボトルを人数×3日×1.5本で計算し、箱買いで一気に揃えます。ここは分割せず最初に片づけます。
パックごはんとアルファ米を半々くらいで。普段も食べる比率を多めにしておくと、期限が来ても消費に困りません。
缶詰・レトルトを買い物のたびに2〜3個ずつ余分に。1か月あれば3日分は埋まります。
コンロがあるか、ボンベの期限(製造から約7年が目安)が切れていないかを見ます。
パスタ・乾麺・切り餅・缶詰を1〜2品ずつ増やし、数か月かけて1週間分へ。
この5段階を、非常食としてしまい込まずに日常の中で回していくのがローリングストックです。使ったら買い足すという一行に尽きるのですが、続く人と続かない人の違いは、置き場所と買い足すタイミングを決めているかどうかにあります。やり方はローリングストックの始め方にまとめました。
なお、1週間分が揃ったらそこで手を止めて構いません。家庭の備蓄としては十分な水準で、その先は月々の食費と収納を圧迫するばかりです。
よくある質問
非常食の日数は、3日分を埋めてから1週間分へ。この順番さえ守れば、あとは買い物のついでに少しずつ足していくだけです。備蓄量の目安や自治体ごとの推奨日数は見直されることがあるので、お住まいの自治体の防災ページと農林水産省の食品ストックガイドで、一度ご自身の地域の想定を確認しておいてください。
