「ポータブル電源 買ってはいけないメーカー」で検索する方が増えています。停電への備えとして関心が高まる一方で、発火事故のニュースを見て不安になった、という方が多いのだと思います。この記事では特定のメーカーを名指しする代わりに、どの製品を前にしても使える5つの判断基準をお伝えします。PSEマークの意味、電池の種類、保証窓口、価格とスペックの読み方、レビューの見抜き方——この順に見ていけば、危ない製品はかなりの確率で避けられます。
「買ってはいけないメーカー」を名指ししない理由
結論から言うと、メーカー名のリストを覚える方法はあまり役に立ちません。理由は3つあります。
ひとつは、入れ替わりが早すぎることです。とくに通販モールで見かける低価格帯のブランドは、同じ工場でつくられた製品にロゴだけ変えて売られていることがあり、評判が悪くなればブランド名ごと消えて別名で再登場します。半年前のリストは半年後には役に立ちません。
ふたつめは、大手でも事故は起きるということです。名の知れたメーカーでも特定ロットのリコールは実際に発生しています。「このメーカーなら無条件で安心」という線引きは存在しません。
みっつめは、名指しは読者の判断力を育てないことです。覚えるべきはメーカー名ではなく、製品ページのどこを見れば危険信号に気づけるかです。以下の5つは、店頭でもネットでも数分で確認できます。
判断基準①:PSEマークと安全認証の有無
ここが最初のつまずきポイントです。「PSEマークがあるから安全」と思っている方が多いのですが、ポータブル電源については話がやや複雑です。
経済産業省の電気用品安全法では、モバイルバッテリー(ポータブルリチウムイオン蓄電池)は2019年2月からPSEマークの表示が義務づけられています。一方、交流100Vを出力できるポータブル電源は「蓄電池」の区分に当てはまらないとされ、本体そのものは規制の対象外です。付属のACアダプター(充電器)は対象なので、そちらにPSEマークが付いていることはあります。
つまり、ポータブル電源本体に丸いPSEマークが見当たらなくても、それ自体は違法でも異常でもありません。逆に、アダプターのPSEマークを本体の安全性の証明であるかのように大きく載せている商品ページは、説明として不正確です。
では何を見るか。経済産業省は2024年2月に「ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)」を公表しました。国際規格のJIS C 62368-1をベースに、規格化を待たずに使えるよう安全対策をまとめたものです。この内容は電気安全環境研究所(JET)のSマークの追加基準にも採り入れられており、2025年には業界団体として日本ポータブル電源協会も設立されています。「Sマーク」や、UL・UN38.3・IEC62368といった具体的な規格名と認証機関が明記されているかが、現時点でいちばん実質的な手がかりです。
「安全認証取得済み」「国際基準クリア」とだけ書いてあり、どの規格をどこで取得したのか書かれていない製品は、その一点だけで候補から外して構いません。
PSEマークについて覚えておきたいこと
・ポータブル電源本体は電気用品安全法の対象外(AC出力があるため蓄電池に該当しない)
・付属のACアダプターは対象で、PSEマークの表示義務がある
・本体の安全性は、Sマークや規格名の明記で確認する

判断基準②:電池の種類と発火リスク
中に入っている電池の種類は、必ず確認してください。現在のポータブル電源で使われるリチウムイオン電池は、大きく分けてリン酸鉄リチウム(LiFePO4、リン酸鉄系)と三元系(NCM)の2つです。
| 項目 | リン酸鉄リチウム | 三元系(NCM) |
|---|---|---|
| 熱への強さ | 熱暴走が起きにくい | 相対的に起きやすい |
| 寿命の目安 | 2,000〜4,000回程度の充放電 | 500〜800回程度 |
| 重さ | 同容量でやや重い | 軽くコンパクト |
| 向く用途 | 家庭の備蓄・長期保管 | 持ち運び重視 |
家庭の防災用として置いておくなら、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を選ぶのが基本です。数年に一度あるかないかの停電のために置いておく機材ですから、劣化しにくく熱に強いほうが理にかなっています。三元系が悪いわけではなく、軽さが要る登山やソロキャンプでは合理的な選択です。
製品評価技術基盤機構(NITE)には、2020年からの5年間でリチウムイオン電池を搭載した製品の事故が1,860件報告されており、そのうち約85%が火災に至っています。事故の多くは過充電・内部短絡・外部からの加熱がきっかけです。裏を返せば、過充電保護や温度監視を行うBMS(バッテリーマネジメントシステム)の記載があるかどうかは、安全対策にコストをかけているかの目安になります。
電池の種類が商品ページのどこにも書かれていない製品は避けてください。書ける内容を書いていないのは、書きたくない理由があるときです。
判断基準③:保証とサポート窓口が国内にあるか
ポータブル電源は、買ったあとに困りごとが出やすい製品です。充電できない、残量表示がおかしい、膨らんできた気がする——こうしたとき、連絡先がメールアドレス1つしかないのは心細いものです。
確認したいのは、日本国内に法人か代理店の窓口があるか、電話またはチャットで連絡が取れるか、保証期間が何年か、の3点です。主要メーカーの保証は3〜5年が目安で、それより短い製品は、メーカー自身が長期の使用を想定していないと読めます。
あわせて、PL保険(生産物賠償責任保険)への加入を明記しているかも見てください。万一の際に補償の枠組みがあるという意味でもあり、それ以上に、そこまで開示している事業者は責任の所在をはっきりさせているという意味を持ちます。
購入前に、メーカー公式サイトに日本語の問い合わせ窓口と所在地の記載があるかを確認しておきましょう。

判断基準④:極端な安さとスペック表記の怪しさ
容量あたりの価格には、おおよその相場があります。執筆時点(2026年8月)では、リン酸鉄リチウムで1,000Wh前後・定格出力1,000W級の製品が10万円前後、セール時で7〜8万円台というあたりが一般的な水準です。ここから大きく外れて、同じ容量が2万円台で売られていたら、何かを削っているとみるのが自然です。
スペック表記では、次の点を見ます。
まず容量です。「300,000mAh」のようにmAhだけで大きく見せている表示は要注意で、Wh(ワットアワー)換算が併記されていないと実際の容量が分かりません。mAh×電圧÷1000がWhですから、3.7V換算と11.1V換算では数字が3倍違います。比べるときは必ずWhに揃えるのが鉄則です。
次に出力です。定格出力(連続して出せる電力)と瞬間最大出力を混同させ、大きいほうだけを載せている製品があります。ドライヤーや電気ケトルを動かしたいなら効くのは定格のほうです。
容量がmAhのみ、出力が最大値のみ、電池の種類が非記載——この3つが揃った製品は、価格が安くても購入を見送ってください。
もうひとつ、同じ写真・同じ説明文でブランド名だけ違う商品が並んでいる場合、その価格帯全体が同じ供給元である可能性があります。レビュー件数の多寡で選んでも、中身は変わらないことになります。
判断基準⑤:レビューの見抜き方
星の平均点はほとんど参考になりません。見るべきは中身です。
短期間に同じような文体の高評価が集中している、写真が箱の外観ばかりで使用中の様子がない、「思ったより軽いです」「デザインがおしゃれ」など製品の性能に触れない褒め方が並ぶ——このあたりは典型的なパターンです。逆に、低評価レビューのほうに情報が詰まっていることがよくあります。「半年で残量表示が狂った」「充電が80%で止まる」といった時間の経過を含む書き込みは、実際に使った人でないと書けません。
星3のレビューを優先して読むのもおすすめです。極端な評価より、良い点と不満点を両方書いている人の記述がいちばん実像に近くなります。
それと、レビュー特典で高評価を依頼するカードが同梱される製品があります。これは通販モールの規約に反する行為で、そういう手法を使う事業者だと分かった時点で、返品の判断材料にしてよいと思います。
逆に、信頼できるメーカーに共通すること
ここまでの裏返しになりますが、比較的安心して選べる製品には共通点があります。取得した安全規格と認証機関を具体的に書いている。電池の種類とサイクル寿命を明記している。定格出力と瞬間最大出力を分けて書いている。日本国内に窓口があり、保証年数が長い。そして、過去にリコールを出した際に、自社サイトで対象ロットと対応方法を公表している。
最後の点は見落とされがちですが、大切なところです。不具合を隠さず公表した実績があるメーカーは、次に何かあったときも公表します。事故ゼロを謳うメーカーより、対応の記録が残っているメーカーのほうを、私は信頼します。
国内メーカーか海外メーカーかという軸で迷っている方は、ポータブル電源の日本製・国内メーカーの選び方もあわせてどうぞ。具体的な製品まで絞り込みたい場合は、ポータブル電源のおすすめと選び方で容量別に整理しています。
中古・フリマでの購入をすすめない理由
ポータブル電源に関しては、中古やフリマアプリでの購入をおすすめしません。理由ははっきりしています。
リチウムイオン電池は、使わずに置いておくだけでも劣化します。前の持ち主が満充電のまま高温の場所に置いていたか、何回充放電したかは、外からは分かりません。表示される残量は正常でも、内部のセルが傷んでいる可能性があります。落下や水濡れの履歴も同様で、外装がきれいでも内部で異常が進んでいることがあります。
さらに、メーカー保証は多くの場合、購入者本人に限られます。中古品は不具合が出ても保証の対象外になり、リコールが出ても連絡が届きません。防災用として置いておく機材で、これは避けたいところです。
安く手に入れたいなら、新品のセール時期を待つほうが確実です。防災の日にあたる9月前後と年末年始は、大手メーカーがまとまった値引きをする時期にあたります。
「そもそも買うべきか」を迷っている人へ
ここまで読んで、少し腰が引けた方もいるかもしれません。それでいいと思います。ポータブル電源は、家庭のそなえの中では優先順位がやや後ろにある品目です。
水と食料、簡易トイレ、明かり、携帯ラジオ、モバイルバッテリー。この5つが揃っていない段階なら、10万円をポータブル電源に使うより先に手を付けるところがあります。停電時にスマホの充電だけが目的なら、1万円以下のモバイルバッテリーを2つ持つほうが実用的です。
逆に、在宅避難を前提にしていて、冷蔵庫やCPAP(睡眠時無呼吸の治療機器)、電動ベッドなど止められない機器がある家庭では、優先度が一気に上がります。ペットのいる家では、夏場の冷房や暖房が止まったときの対策としても意味があります。我が家も猫がいるので、そこは真剣に考えたところです。
必要かどうかの線引きは、ポータブル電源は本当に必要かで家庭のタイプ別に整理しています。判断が付かないうちは、無理に買わなくて大丈夫です。備えは、途中で止まっているより、順番どおりに進んでいるほうが結果的に強くなります。
よくある質問
まとめ:5つの基準を一度だけ通せば十分
あらためて整理すると、確認するのは次の5点です。安全規格と認証機関が具体的に書かれているか。電池がリン酸鉄リチウムか。国内窓口と3年以上の保証があるか。容量がWhで、出力が定格で書かれているか。レビューに時間の経過を含む記述があるか。
買う前に一度この5つを通せば、それでもう十分です。この手の記事を何本も読み比べて、細かい仕様の差に迷い始めると、かえって決められなくなります。5つを満たす製品を1台選んだら、あとは半年に一度充電の様子を見る。そこまでできていれば、家庭のそなえとしては合格です。
なお、PSEをめぐる制度は現在も見直しが進んでいます。価格やセールの内容も変わりますので、購入前に経済産業省の電気用品安全法のページと各メーカーの公式サイトで最新の状況をご確認ください。
