防災士は、家庭や地域の備えを自分の言葉で説明できるようになる資格です。ただ、調べはじめると「研修」「試験」「救命講習」と手順が並んでいて、結局どこから申し込めばいいのか分かりにくいのが正直なところ。この記事では、防災士資格の取り方を3ステップに整理して、何日かかるのか・いくらかかるのか・どの講座を選ぶかまでを順番に見ていきます。
防災士資格の取り方:3ステップの全体像
防災士は、日本防災士機構という民間団体が認証する資格です。国家資格ではありませんが、取得の道すじはきちんと決まっていて、「養成研修講座の受講」「資格取得試験の合格」「救急救命講習の修了」の3つがそろって初めて認証登録ができます。どれか1つでも欠けていると登録に進めません。
順番はある程度自由で、救急救命講習だけは研修の前でも後でもかまいません。ただし実際には、研修講座を申し込んだ時点で試験日もセットで決まる形が多いので、「まず講座を探す」ところから動くのが分かりやすい入り口になります。
①養成研修講座を受ける
機構が認証した研修機関が開く「防災士養成研修講座」を受け、研修履修証明を受け取ります。講座は土日をつぶす2日間の集中型が主流で、地震や風水害のしくみ、避難所運営、家庭内の備え、地域防災といった内容を通しで学びます。
見落としやすいのが事前課題です。多くの研修機関では、開催の3〜4週間前に防災士教本が届き、それを読みながら「履修確認レポート」を書いて当日に提出します。ここを直前まで放っておくと、たいてい前夜に慌てることになります。
教本が届いたら、まずレポートの設問だけ先に目を通しておくと読む場所が絞れます。
②資格取得試験に合格する
試験は研修2日目の最後に行われるのが一般的です。3択式で30問、試験時間は50分。正答率80%(30問中24問)以上で合格という基準が示されています。出題は教本と講義の範囲から出るため、講座をきちんと聞いていれば手が止まる問題はそう多くありません。
日本防災士機構が公表している2024年度の合格率は91.8%でした。落とすための試験ではない、という位置づけがこの数字によく表れています。
③救急救命講習を受ける
心肺蘇生法とAEDの使い方を含む救急救命講習を受け、修了証(またはそれに相当する証明)を取得します。自治体や地域の消防署、日本赤十字社などが開いている3時間程度の普通救命講習が代表的で、多くの消防本部では無料で受けられます。
この講習は先に済ませておいても有効です。すでに職場の研修などで修了証を持っている場合は、それが使えることもあります。ただし発行から一定期間内のものに限る、といった条件が研修機関ごとに設定されている場合があるので、手元の修了証の日付は確認しておいてください。

何日で取れる?最短スケジュールの例
拘束される日数だけを数えると、研修講座2日+救急救命講習1日の、実質3日間です。試験は研修2日目に組み込まれているので、試験のために別日を空ける必要はありません。
ただし「申し込んでから認証されるまで」の期間はもう少し見ておく必要があります。教本が届くまでに数週間、そこから事前レポート、研修と試験、合格通知、認証登録申請と続くため、動き出してから防災士認証状が手元に来るまでは、おおむね2〜3か月をみておくと落ち着いて進められます。
開催地・日程・費用を比べ、受けられる回を決めて申し込みます。人気の回は早く埋まるので、2〜3か月先の日程で探すのが現実的な組み方です。
届いた教本を読み、履修確認レポートを仕上げます。1日1〜2講分ずつ進めると、2週間ほどで無理なく終わります。
消防署などの普通救命講習を予約し、修了証を受け取ります。研修前でも後でも構いません。
講義を受け、2日目に試験を受けます。
合格通知を受け取ったら、修了証などをそろえて機構へ申請します。

費用はいくら?内訳と抑え方
かかるお金は「研修受講料」「教本代」「受験料」「認証登録料」の4つに分かれます。このうち受験料3,000円と認証登録料5,000円は全国共通で、残りの受講料と教本代が研修機関によって大きく変わります。
たとえば大学が開く講座では、受講料14,000円・教本代4,000円・受験料3,000円・認証登録料5,000円で、合計26,000円という設定があります(2026年度・大阪公立大学の例)。一方、民間の研修機関が全国で開く講座は受講料が5万円前後で、総額6万円台になることも珍しくありません。同じ資格でも、どこで受けるかで倍以上の差が出ます。
| 費目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 研修受講料 | 無料〜5万円台 | 機関差が最も大きい |
| 防災士教本代 | 4,000円前後 | 受講料に含む場合あり |
| 資格取得試験受験料 | 3,000円 | 全国共通 |
| 認証登録料 | 5,000円 | 合格者のみ・全国共通 |
| 救急救命講習 | 無料のことが多い | 消防本部などが実施 |
費用を抑える一番の近道は、自治体の助成制度を先に確認することです。地域の防災リーダーを増やしたい自治体が、受講料の全額または一部を負担する制度を設けている例が各地にあります。日本防災士機構のサイトに助成制度のある自治体の一覧が掲載されているほか、お住まいの市区町村の防災担当課に聞けば早いです。
自治体の助成は「自主防災組織の推薦がある人」「町内会の役員」など対象を限っていることがあります。条件に当てはまるなら、自費で申し込む前に相談したほうが負担はぐっと軽くなります。
費目ごとの内訳や助成の探し方は、防災士の費用を詳しくまとめた記事で扱っています。
研修講座の選び方:会場・オンライン・大学
研修講座には大きく3つの受け皿があります。全国の主要都市で定期開催している民間の研修機関、自治体が地域の担い手向けに開く講座、そして大学などの教育機関が一般にも開放している講座です。
近年はオンライン受講に対応する講座も増えました。会場までの移動と宿泊が要らないぶん、遠方に住んでいる人にとっては総額が下がります。ただし試験は会場受験になる形式もあるため、「講義がオンラインでも、試験日は現地に行くのか」を申し込み前に必ず確認してください。ここを読み飛ばすと、あとから交通費と休みの調整が発生します。
選ぶ順番としては、まず自治体の講座と助成の有無を調べ、対象外だった場合や日程が合わない場合に民間の講座を検討する、という流れが無駄がありません。研修講座の種類と選び方もあわせてどうぞ。
申し込みから認証までの流れと必要書類
申し込みは、受ける研修機関のサイトから行います。氏名・住所・連絡先のほか、認証登録に使う顔写真を求められることが多いので、証明写真を1枚用意しておくとその場で止まりません。
試験に合格したあと、認証登録申請に必要になるのは主に次の3点です。研修機関が発行する研修履修証明、機構が出す試験合格の通知、そして救急救命講習の修了証の写し。加えて認証登録料5,000円を納めます。研修機関がまとめて手続きを代行してくれる講座もあり、その場合は書類を提出するだけで済みます。
救急救命講習の修了証は再発行が難しいことがあります。受け取ったらコピーを取り、原本は他の書類とまとめて保管しておいてください。
申請が受理されると、防災士認証状と防災士証(カード)が届きます。ここで正式に防災士です。
誰でも受けられる?受験資格の確認
学歴・年齢・実務経験といった受験資格の制限はありません。養成研修講座を受けて履修証明を得た人であれば、誰でも試験を受けられます。小学生や中学生で取得した例も報道されていて、家族で一緒に受講する人もいます。
ただし、自治体が主催する講座は「市内在住・在勤の人」「自主防災組織からの推薦がある人」といった条件を付けていることがあります。これは資格そのものの制限ではなく、その講座の募集条件です。条件に合わない場合は、民間の研修機関の講座を選べば問題なく受けられます。
高齢のご家族と暮らしている方や、ペットのいるご家庭の方が受けると、講義で出てくる避難所の話が一気に自分ごとになります。私自身、猫を連れてどう動くかを具体的に考えるようになったのは、この分野を学び直してからでした。資格そのものより、そこで手に入る「考える枠組み」のほうが日々の役に立ちます。
よくある質問
資格は一生有効?更新は必要?
防災士の認証に有効期限はなく、更新手続きも必要ありません。一度登録すれば、返上や取り消しがない限り資格は続きます。年会費もかかりません。
混同しやすいのが「日本防災士会」という別組織です。こちらは防災士が任意で入る全国組織で、加入すると年会費が発生します。研修や地域活動の情報が得られる場ですが、加入しなくても防災士であることに変わりはありません。
試験はどれくらい難しい?
2024年度の合格率は91.8%。3択30問で24問正解すれば合格ですから、教本を通読して事前レポートを自分の手で仕上げていれば、十分に届く水準です。研修2日間の講義でも要点が繰り返し出てくるため、そこで記憶が固まります。
万一不合格でも、再受験の道は用意されています(手続きと受験料は研修機関に確認してください)。難易度の中身や勉強時間の目安は防災士試験の難易度をまとめた記事で掘り下げています。
防災士は、家の備えを一から見直すきっかけとしてよくできた資格です。とはいえ、資格がなければ備えられないわけではありません。水と食料のローリングストック、家具の固定、連絡手段の取り決め——このあたりが回っているご家庭なら、そこまでで暮らしの備えとしては十分に立っています。もう一歩、地域や職場に広げたい気持ちが出てきたときが、申し込みどきです。
なお、受講料・開催日程・助成の有無は年度ごとに変わります。申し込みの前に、日本防災士機構と受講予定の研修機関の公式サイトで最新の条件をご確認ください。
