停電への備えは4つだけ|明かり・情報・冷蔵庫・暑さ寒さ/はじめての防災・第5回

LEDランタンとスマートフォン、モバイルバッテリーを並べた停電への備え

地震でも台風でも大雪でも、家で最初に困るのは電気が止まることです。とはいえ停電のために買うものは、実はそれほど多くありません。この記事では、停電の備えを「明かり・情報・冷蔵庫・暑さ寒さ」の4つに絞って、それぞれ何をどこまで用意すれば足りるのかをお伝えします。はじめての防災シリーズの第5回、今回は在宅避難を前提にした電気まわりの話です。

目次

停電の備えは「明かり・情報・冷蔵庫・暑さ寒さ」の4つ

停電対策の記事を読むと、あれもこれも必要に見えてきます。けれど実際に電気が止まったときに困ることを並べていくと、困りごとは「明かり・情報・冷蔵庫・暑さ寒さ」の4つに集約されます。夜が真っ暗で動けない、スマホの電池が減っていく、冷蔵庫の中身が心配、そして夏なら暑さ・冬なら寒さ。この4つさえ手当てできていれば、数日の停電は家で乗り切れます。

逆に言えば、この4つに当てはまらないものは後回しでかまいません。発電機も、家じゅうをまかなう大型の蓄電池も、はじめの一歩には要りません。順番をつけて、上から埋めていきましょう。

停電の規模感も知っておくと落ち着きます。台風や大雪による停電は多くが数時間〜1日程度で復旧しますが、2018年の北海道胆振東部地震のように電力網全体が止まると、全域の復旧までに数日かかることがあります。「一晩」ではなく「三日間」を想定して備えると、たいていの停電は射程に入ります

明るさを調節できる充電式のLEDランタン

明かり:懐中電灯よりランタン型が家では使いやすい

まず明かりです。ここは迷わずランタン型をおすすめします。懐中電灯は一方向しか照らせないので、手に持っている人しか使えません。家族が別の部屋にいるとき、トイレに立つとき、そのたびに取り合いになります。ランタンは置くだけで部屋全体が使えるようになるので、家の中の停電では圧倒的に出番が多いのです。

数の目安は、リビングに1つ、寝室に1つ、トイレや洗面所に置ける小さいものが1つ。我が家は3つ置いています。加えて、両手が空くヘッドライトか首から下げるライトが1つあると、暗い中で片付けをするときに助かります。LEDランタンは1,500〜3,000円台のものが主流で、この価格帯なら十分実用になります(価格は執筆時点・2026年8月の目安です)。

選ぶときのポイントは3つあります。ひとつは電池の種類。乾電池式は電池さえあれば動き、充電式は繰り返し使えて経済的です。迷うなら、乾電池式と充電式を1つずつ持っておくと、どちらかが切れても明かりが消えません。ふたつめは明るさの調節ができること。夜通しつけるなら暗めのモードのほうが電池がもちますし、まぶしすぎると眠れません。みっつめは、電池のサイズを家の中で統一しておくこと。単3で揃えておけば、備蓄も入れ替えも一種類で済みます。

ろうそくは使わないでください。停電中は消火にも避難にも手が回りにくく、倒れれば火事になります。

停電中の明かりに火を使わない。ろうそくやオイルランプは屋内では避け、LEDの明かりに統一します。

情報:スマホの電池をもたせる設定と充電手段

停電で最も心細くなるのは、スマホの残量が減っていくのを眺めている時間です。ここは「減らさない」と「足す」の両方から手を打ちます。

減らさない側でいちばん効くのは、低電力モード(省電力モード)をすぐオンにすることと、画面の明るさを下げること。この2つだけで体感がかなり変わります。次に、基地局が被災していると電波を探し続けて電池を消耗するので、圏外が続くようなら機内モードにして、時々解除して確認する使い方が有効です。動画を流しっぱなしにするのもやめて、情報収集はテキスト中心に切り替えます。

足す側は、モバイルバッテリーが基本です。10,000mAh前後のものでスマホをおおむね1.5〜2回分充電できます。家族2人なら20,000mAhクラスを1つ、あるいは10,000mAhを2つ。大事なのは容量より、半年に一度は充電を足して満充電に近い状態を保っておくことです。しまい込んだまま残量ゼロのモバイルバッテリーほど、悔しいものはありません。防災リュックの点検日を決めて、そのときに一緒に充電するのが続けやすいやり方です。

車がある家庭なら、シガーソケットからのUSB充電も現実的な手段になります。ただしエンジンをかけたまま充電する場合は、排気の逃げ場のない場所(車庫内・雪で埋まった車の周り)では絶対に行わないでください。

情報源そのものについては、テレビが映らない前提で考えます。手回しやソーラーのラジオを1台持っておくと、スマホの電池を守りながら状況がわかります。停電の復旧見込みは電力会社の停電情報ページで公表され、避難所や給水の情報は自治体から出ます。どこを見るかを、停電する前にブックマークしておくのが実質的な備えです。気象や河川の情報は気象庁、生活の情報はお住まいの自治体、と入口を分けておくと迷いません。

電池のもたせ方や充電手段の細かい話は、停電対策のまとめ記事で具体的に書いています。あわせてどうぞ。

冷蔵庫と食べ物:開けない、先に食べる順番を決める

停電したら、冷蔵庫はまず開けないことです。扉を閉めたままなら、冷蔵庫の冷えはおおむね2〜3時間は保たれます(設置場所や季節、中身の量で前後します)。ところが扉を10秒ほど開けるだけで庫内の温度は数℃上がってしまうので、「大丈夫かな」と確認するために開けるのが、いちばん中身を傷める行動になります。

冷凍庫は保冷剤の塊のようなものなので、冷蔵室よりずっともちます。詰まっているほど長持ちするため、普段から冷凍庫をすかすかにしないでおくと、それ自体が停電対策になります。ペットボトルの水を凍らせて隙間に入れておけば、停電時は保冷剤になり、溶ければ飲み水にもなります。

数時間で復旧しそうなら、開けずに待つ。長引きそうなら、傷みやすいものから食べる。この順番だけ決めておけば十分です。目安はこちらです。

順番食べるもの考え方
1番目冷蔵室の惣菜・牛乳・豆腐・調理済みのものいちばん傷みやすい。停電の当日中に食べきる
2番目冷凍庫のもの(解けはじめたものから)解けきる前に加熱して食べる。再冷凍はしない
3番目常温の買い置き・レトルト・缶詰日持ちするので最後。ローリングストックの出番

調理はカセットコンロがあれば、電気が止まっていてもお湯が沸かせます。ボンベは1本で1時間ほど(火力によります)が目安なので、3日分と考えて4〜6本あれば足ります。カセットコンロとボンベは、停電・ガス停止のどちらにも効く、費用対効果のいちばん高い備えだと思っています。

におい・見た目・味に少しでも違和感があるものは食べない。迷ったら処分するのが結局いちばん安上がりです。

夏と冬で変わる備え:暑さ寒さ対策

4つめは、季節によって中身が入れ替わる部分です。エアコンが止まった家は、夏は思った以上に暑く、冬は思った以上に冷えます。ここだけは「夏の停電」「冬の停電」を分けて考えてください。

夏に効くのは、電池で動く小型扇風機、水で濡らして首に巻けるタオル、冷却シート、そして凍らせたペットボトル。汗をかくぶん水も多めに必要になります。カーテンを閉めて日射を遮り、家の中でいちばん風の通る場所に居場所を移すのも、道具を使わずできる対策です。

冬に効くのは、まず着るもの。停電時の暖房を電気に頼らないとすると、実際に体を温めてくれるのは重ね着・毛布・寝袋・使い捨てカイロです。頭と首と足首を覆うだけで体感がずいぶん変わります。灯油ストーブを使う場合は、必ず換気しながら。石油ファンヒーターは電気がないと動かないので、暖房を持っているつもりで停電時に使えない、という取り違えが起きやすいところです。

【高齢の家族・ペットがいる家庭は季節対策を厚めに】

体温の調節が難しい家族がいる場合、暑さ寒さは命に直結します。夏は水分と冷却グッズを多めに、冬はカイロと毛布を人数分より多めに用意してください。ペットは自分で暑い・寒いと言えません。ケージにかける毛布や、風の通る場所への移動も、あらかじめ決めておくと慌てずに済みます。

我が家は黒猫のモカがいるので、夏はモカが涼める場所を先に決めています。人より低い場所で暮らしている分、床に近いところが暑くなると逃げ場がなくなるからです。

USBとAC出力を備えた小型のポータブル電源

電源はどこまで用意する?モバイルバッテリーからポータブル電源まで

ここまでの4つを埋めたうえで、「もっと大きな電源が要るのか」という話です。結論から言えば、多くの家庭はモバイルバッテリーと乾電池で足ります。段階で考えると迷いません。

第一段階は、乾電池とモバイルバッテリー。明かりとスマホをまかなうためのもので、合わせて数千円。ここは全家庭にあってよい備えです。

第二段階が、小型のポータブル電源。300〜500Wh程度の容量帯で、スマホを何度も充電したり、扇風機やノートパソコン、小さな電気毛布をしばらく動かしたりできます。価格帯は執筆時点でおおむね3万〜7万円台。「電気がないと困る事情」がある家庭は、この段階まで進む価値があります。在宅で仕事をしている、電気を使う医療機器がある、小さな子どもや高齢の家族がいる、といった場合です。

第三段階が、1,000Wh以上の大容量や、家に据え付ける蓄電池。冷蔵庫を動かし続けたい、エアコンを使いたいという話になると、この規模が必要になります。ただし金額も設置の手間も一気に上がるので、防災だけを理由に選ぶものではありません。太陽光発電や電気代の削減とセットで考える買い物です。

選ぶときは、容量(Wh)だけでなく定格出力(W)を見てください。動かしたい家電の消費電力が定格出力を超えていると、容量が十分でもそもそも起動しません。あわせて、PSEマークの有無、保証年数と国内サポートの窓口、電池の種類(リン酸鉄リチウムイオンは長寿命)を確認します。容量表示だけが極端に安い製品は、実際に使える電力量がカタログ値どおりとは限りません。この3点を満たしていないものは、価格が魅力的でも候補から外して差し支えありません。

必要な容量は「動かしたい家電」から逆算する。先に本体を選ばない。

ポータブル電源が自分の家に必要かどうかの判断は、ポータブル電源は必要かで、暮らし方別に整理しています。買う前に一度読んでみてください。

まとめ|前回・次回

停電の備えは、明かり・情報・冷蔵庫・暑さ寒さの4つです。ランタンを部屋の数だけ置き、モバイルバッテリーを充電しておき、冷蔵庫は開けずに食べる順番を決めておき、季節に合った暑さ寒さの手当てをする。ここまでで、家庭の停電対策としては十分に及第点です。ポータブル電源はその先の選択肢なので、慌てて買わなくてかまいません。

今日できることをひとつだけ挙げるなら、モバイルバッテリーの残量を確認することです。いま満充電なら、それだけで停電初日の不安はずいぶん減ります。

前回は断水とトイレの備えを扱いました。停電と断水は同時に起きることが多いので、あわせて読むと家の中の見取り図がはっきりします。次回は家具の固定と部屋の安全です。買い足すお金がほとんどかからないのに効果が大きい、地味だけれど外せない回になります。

なお、停電の復旧見込みや避難情報は状況によって変わります。実際に停電が起きたときは、電力会社の停電情報とお住まいの自治体・気象庁の発表をご確認ください。

停電したら、まず何をすればいいですか?

明かりを確保して、スマホを低電力モードに切り替えます。そのうえで冷蔵庫を開けないと決め、電力会社の停電情報で復旧見込みを確認します。この3つの順番で動けば、判断に迷う場面はほとんどありません。

モバイルバッテリーは何mAhあれば足りますか?

1人あたり10,000mAhを目安にすると、スマホをおおむね1.5〜2回分充電できます。2人暮らしなら20,000mAhクラスを1つ、または10,000mAhを2つ。容量を増やすより、半年に一度充電を足して満充電を保つほうが実際には効きます。

冷蔵庫の中身は何時間もちますか?

扉を開けなければ、冷蔵室でおおむね2〜3時間が目安です。冷凍庫はもっと長くもちます。確認のために何度も開けるのが最も傷みを早めるので、復旧が数時間以内の見込みなら開けずに待ってください。

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