地震の備えは、やることが多すぎて途中で止まってしまいがちです。この記事では「命を守る→けがをしない→生活をつなぐ」という順番に沿って、今日・今週・今月でできることを並べ替えました。家具の固定から水・食料・トイレの備蓄、停電と連絡の決めごとまで、上から順に手をつければ一通りそろいます。全部を一度にやる必要はありません。
地震の備えは「命を守る→けがをしない→生活をつなぐ」の順で
備えの記事を読むと、持ち出し袋の中身から始まっているものが多いのですが、順番としては後ろの方です。地震で最初に起きるのは強い揺れで、そのとき家の中で何が倒れてくるかが生死を分けます。持ち出し袋は「生き延びて、家から出られた人」が使うものです。
ですから優先順位は、①命を守る(家具の固定・寝室の安全)→②けがをしない(ガラス・照明・足元)→③生活をつなぐ(水・食料・トイレ・電源)の順になります。この順に上から埋めていけば、途中で力尽きても、そこまでで効果の大きい部分は押さえられています。
お金をかける順番も同じです。まず数千円の固定金具、次に持ち出し袋、そのあとに電源や大型の備蓄品です。
定番「地震に対する10の備え」を、やりやすい順に並べ替える
東京消防庁が公開している「地震に対する10の備え」は、身の安全の備え・初期対応の備え・確かな行動の備えという三つの柱で構成されています。家具類の転倒落下防止、けがの防止、家屋や塀の強度確認、消火の備え、火災の早期発見、非常用品、家族での話し合い、地域の危険性の把握、防災知識、防災行動力の10項目です。内容としてはこれで過不足がありません。
ただ、10項目を上から順にやろうとすると、二つ目の「けがの防止対策」あたりで手が止まります。そこで、家庭で実際に動かしやすい順に組み替えたのが以下のリストです。この記事はこの並びで進みます。
- 今日(30分〜1時間):寝室の家具固定・配置換え、ガラスと照明の対策
- 今週(買い物1回分):持ち出し袋を1つ作る、消火器と住宅用火災警報器の確認
- 今月(数回に分けて):水・食料・トイレの備蓄、停電と情報の備え、家族の決めごと

【今日できる】寝る場所と逃げ道の安全をつくる
今日やるなら、寝室からです。夜中に地震が起きたとき、寝ている人は身構えることも逃げることもできません。過去の大地震では、負傷者の多くが家具の転倒や落下物によるけがでした。眠る場所の頭上と周囲を片づけるのは、お金をほとんどかけずにできて、効果がいちばん大きい対策です。
家具の固定と配置の見直し
まず、寝ている位置から手を伸ばした範囲に、倒れて体に当たる高さの家具がないかを見ます。本棚・タンス・食器棚が寝床の近くにあるなら、置き場所を変えるのが最優先です。移動できないなら固定します。
固定の基本は、天井との間に突っ張り棒を入れるだけで終わらせないことです。突っ張り棒は天井が弱いとめり込んでしまうため、家具の下の前側にストッパーを差し込んで前傾させ、上下で組み合わせると効きが変わります。壁にネジを打てるなら、L字金具が最も確実です。具体的な固定方法は家具の転倒防止の基本で詳しく書いています。賃貸で壁に穴を開けられない場合は、賃貸でもできる転倒防止のやり方を参考にしてください。
あわせて、収納の重心も見直します。重い物を下段、軽い物を上段に入れ替えるだけで、家具は倒れにくくなります。開き戸には耐震ラッチを付けるか、耐震ラッチがなければ100円ショップの引き出しストッパーでも、中身の飛び出しはかなり防げます。
ガラスと照明の飛散対策
寝室で見落としやすいのが窓ガラスと照明器具です。窓ガラスには飛散防止フィルムを貼ります。全面が難しければ、ベッドや布団に近い側の一枚だけでも構いません。ペンダントライト(吊り下げ型の照明)は揺れて落ちることがあるので、寝床の真上にあるならシーリングライトに替えるか、位置をずらします。
そして、枕元にスリッパか底の厚い靴を置きます。地震のあとの床は、割れたガラスと食器で一面が危険地帯になります。足を切ってしまうと、そこから先の行動がすべて止まります。懐中電灯・眼鏡・スマホもまとめて、枕元の手が届く位置に。ここまでで今日の分は終わりです。
寝床から玄関までの通り道に、倒れて道をふさぐ家具がないかも見ておきます。
【今週できる】持ち出し袋を用意する
寝室が片づいたら、次は持ち出し袋です。避難所へ向かうときに背負って出る一次持ち出し品で、中身は「両手が空いた状態で歩ける重さ」が上限です。目安として、成人男性で15kg前後、成人女性で10kg前後といわれますが、実際に背負って階段を上り下りしてみると、多くの人はもっと軽くしたくなります。我が家では、詰めたあとに一度背負ってみて、そこで2割ほど中身を減らしました。
最低限入れるのは、水と食料が1日分、常備薬とお薬手帳の写し、モバイルバッテリー、懐中電灯、携帯トイレ数回分、現金(小銭を多めに)、身分証のコピー、下着とタオル、そして軍手です。眼鏡やコンタクトの予備、常用している薬は代わりが利かないので、ここだけは省略しないでください。中身の全リストと選び方は防災リュックの中身リストにまとめています。
市販の防災セットを買う場合も、届いたら一度中を開けて、家族の事情に合わせて足し引きします。既製品は最大公約数で作られているので、持病の薬・生理用品・アレルギー対応食などは自分で入れるしかありません。
置き場所は玄関か寝室の出口側です。押し入れの奥にしまい込むと、いざというときに取り出せません。

【今月できる】水・食料・トイレの備蓄
ここからは在宅避難の備えです。家が無事なら、多くの人は避難所ではなく自宅で過ごすことになります。そのときに必要なのが備蓄です。
水は1人1日3リットルが目安です。飲用だけでなく調理の分も含みます。内閣府や農林水産省の資料では最低3日分、南海トラフ地震のように支援が届きにくい災害を想定するなら1週間分が推奨されています。二人暮らしの1週間分なら42リットル、2リットルのペットボトルで21本です。数字にすると多く見えますが、押し入れの下段や階段下に分散して置けば収まります。詳しくは水の備蓄はどれだけ必要かで計算しています。
食料も同じく3日分を最低ラインに、できれば1週間分。ここで無理をせず続けるコツが、ローリングストックです。普段食べているレトルトや缶詰を少し多めに買い、古いものから食べて買い足す。専用の非常食を買い込むより安く、賞味期限切れで捨てる無駄も出ません。長期保存食も組み合わせたい場合は非常食の選び方とおすすめを見てください。
そして、いちばん忘れられているのがトイレです。断水すると水洗トイレは流せなくなり、下水管が壊れていれば水があっても流してはいけません。経済産業省は1人1日5回、1週間で35回分を目安に携帯トイレの備蓄を呼びかけています。二人なら70回分です。凝固剤付きの携帯トイレは1回あたり数十円から用意でき、備蓄品の中では費用対効果がとても高い部類に入ります。種類と選び方は災害用トイレの備え方で扱っています。
1番目:トイレ(代わりがなく、我慢もできない)
2番目:水(飲用と調理で1人1日3リットル)
3番目:食料(ローリングストックで回す)
停電と情報の備え
大きな地震のあとは停電がついてきます。まず必要なのは明かりと、スマホの電源です。明かりは懐中電灯より、置いて使えるランタン型が生活には向きます。両手が空くからです。乾電池は本体と同じ場所にまとめ、年に一度は液漏れを確認します。
スマホは、モバイルバッテリーを1人1台。家族の人数分あるか数えてみてください。数日単位の停電まで見込むなら、ポータブル電源という選択肢もありますが、これは優先順位としては後ろです。家具の固定とトイレの備蓄が済んでから検討する順番になります。停電中の過ごし方と機器の選び方は停電対策のまとめにあります。
情報については、スマホの電池が心配な状況ではラジオが頼りになります。手回し充電機能付きのものは、緊急時の最後の手段としては使えますが、回し続けるのはかなりの労力なので、電池式と併用する前提で考えます。
カセットコンロを使う場合は、必ず換気をしてから点火します。ガス漏れの可能性がある直後の使用は避けてください。
揺れたときの行動を家族で決めておく
モノをそろえるのと同じくらい大事なのが、決めごとです。地震のあとは電話がつながりにくくなり、それぞれが相手を探して動き回ると、かえってすれ違います。
決めておくのは三つだけです。どこで落ち合うか(自宅が使えない場合の集合場所)、どうやって安否を伝えるか、そして誰が何を持って出るか。安否確認は災害用伝言ダイヤル171が基本で、体験利用日に一度使っておくと、当日あわてません。使い方は災害用伝言ダイヤル171の使い方にまとめました。
揺れの最中にどう動くかも、あらかじめ話しておきます。まずは頭を守って、丈夫な机の下などで揺れが収まるのを待つ。あわてて外へ飛び出さない。火の始末は揺れが収まってからで構いません。緊急地震速報が鳴ったときにとる行動については、緊急地震速報が鳴ったらで整理しています。実際の行動指針は気象庁や自治体の案内が一次情報になりますので、そちらもあわせてご覧ください。
ペットがいる家庭の備え
我が家には黒猫がいます。ペットのいる家庭で真っ先に用意したいのは、キャリーケースと、そこに入ることに慣れさせておく時間です。災害のときだけ突然入れようとしても、猫はまず入りません。普段から部屋に置いて、寝床の一つにしてしまうのがいちばん確実でした。
備蓄は、フード・水・常備薬を最低5日分、できれば7日分。人間の食べ物で代用が利かないので、ここは多めに見ます。ペットシーツや猫砂も同様です。それから、迷子になったときのために、マイクロチップの登録内容が最新かどうかと、はっきり顔が写った写真をスマホに入れておくこと。避難所はペットの受け入れ方針が自治体ごとに違うので、お住まいの地域がどうなっているかは事前に確認が必要です。詳しくはペットのいる家庭の防災で書いています。
避難するか家に留まるかを想定しておく
地震のあと、必ず避難所へ行くわけではありません。建物が無事で、火災の危険も津波の心配もない地域なら、自宅で過ごす在宅避難のほうが体への負担は少なくて済みます。ここまで見てきた水・食料・トイレの備蓄は、その在宅避難を成り立たせるための準備です。
判断の分かれ目は、家が使えるかどうかと、地域に別の危険があるかどうかの二点です。津波の浸水想定区域、土砂災害の警戒区域、火災が広がりやすい密集地なら、家が無事でも避難が前提になります。自分の家がどちらなのかは、自治体のハザードマップで先に確かめておきます。在宅避難の具体的な進め方は在宅避難のすすめ方にまとめました。
ここまで読んで、まだ何も手をつけていないという方は、今日は寝室の家具だけで十分です。一度に完璧を目指すより、一つ済ませて次の週末にもう一つ、というほうが結局は早く整います。
やることリストとして、上から順に埋めていってください。
- 寝室の家具を固定するか、寝床から離す
- 枕元にスリッパ・懐中電灯・眼鏡を置く
- 持ち出し袋を1つ作り、玄関か寝室の出口側に置く
- 携帯トイレを1人35回分そろえる
- 水を1人1日3リットル×3〜7日分そろえる
- 食料をローリングストックで回し始める
- 集合場所と171の使い方を家族で決める
- ハザードマップで自宅の危険を確認する
よくある質問
地震に備えて一番必要なものは?
モノを一つだけ挙げるなら携帯トイレです。水や食料は配給や支援でどうにかなる場面がありますが、トイレは待ったが利かず、断水すると即日困ります。ただし、モノより先にやるべきことがあって、それが寝室の家具固定です。倒れてくる家具から身を守れなければ、備蓄品を使う場面まで到達できません。順番としては、家具固定→携帯トイレ→水→食料になります。
スーパーや100均でそろえるなら何から?
100円ショップなら、家具の下に差し込む転倒防止ストッパー、引き出しや開き戸のストッパー、ガラス飛散防止フィルム、ホイッスル、簡易な保温シート、乾電池あたりが実用的です。数百円で寝室の安全度がはっきり上がります。スーパーでは、水のペットボトルと、普段食べているレトルトご飯・缶詰・インスタント味噌汁を少し多めに。日常で食べて買い足せるものを選ぶのがローリングストックの入り口です。カセットボンベも、コンロを持っているなら常に数本の余裕を持たせておきます。
南海トラフに向けて何日分の備蓄が必要?
国の資料では最低3日分、できれば1週間分が目安とされています。南海トラフ地震のような広域災害では、被災地域が広く支援の手が回りにくいため、1週間分が目標になります。二人暮らしの水なら42リットル、携帯トイレなら70回分です。いきなり1週間分をそろえるのが大変なら、まず3日分を確実に用意し、買い物のたびに1〜2本ずつ足していけば、数か月で1週間分に届きます。南海トラフ地震臨時情報が出たときの受け止め方は南海トラフ地震臨時情報とはで説明しています。
なお、備蓄の目安や避難に関する考え方は、内閣府・気象庁・お住まいの自治体が一次情報を公開しています。地域ごとの避難所やハザードマップ、ペットの受け入れ方針は自治体で異なりますので、最終的な確認はお住まいの自治体の公式サイトでお願いします。
