家族構成別・備えナビ|自分の家に合う備えの入口

家庭用に整えた水や懐中電灯などの備蓄品

防災の記事を読むと「非常持ち出し袋に◯◯を入れましょう」というリストが並びますが、同じリストでも一人暮らしの方と、赤ちゃんのいるご家庭と、高齢の親御さんと同居している方では、本当に必要なものがまるで違います。このページは、ご自分の家族構成に近いところから読み進めれば、次に何を揃えればいいかが分かる案内図です。全部を一度に読む必要はありません。当てはまる見出しだけ拾ってください。

押し入れに積まれた備蓄用の水のケース
目次

備えは家族構成で決まる:このページの使い方

備えを考えるとき、最初に決めるのは「何を買うか」ではなく「何人分・何日分か」です。ここだけは家族構成に関係なく共通の物差しがあります。内閣府や農林水産省が示している家庭備蓄の目安は、飲料水が1人1日3リットル、期間は最低3日分、大きな災害に備えるなら1週間分です。飲用だけでなく調理に使う分を含んだ量なので、思ったよりかさばります。

1週間分なら1人21リットル。2リットルのペットボトルで11本、6本入りの箱でおよそ2箱です。夫婦二人なら42リットル、4箱弱。この「箱数」まで落とし込むと、押し入れのどこに置くかまで具体的に決められます。

そのうえで、家族構成ごとに足し引きするものが出てきます。下の表は、それぞれの家庭で最初につまずきやすいポイントをまとめたものです。

家族構成特に手薄になりやすいものまず1つ買うなら
一人暮らし明かり・情報・連絡手段モバイルバッテリー
夫婦二人・共働き離ればなれのときの連絡手段連絡ルールのメモ(無料)
子育て家庭月齢・サイズに合った消耗品おむつ・液体ミルクの買い置き
高齢の家族がいる常備薬・眼鏡・入れ歯など代えのきかないものお薬手帳のコピー(無料)
ペットがいるフード・トイレ用品・キャリーへの慣れいつものフードの買い増し

「まず1つ買うなら」の欄に無料のものが混ざっているのは、お金をかけなくても効く備えが確かにあるからです。備えは買い物から始めなくても構いません。

一人暮らしの備え

一人暮らしの方に最初にお伝えしたいのは、避難所に行くか自宅にとどまるかの二択で考えないことです。建物が無事なら自宅にとどまる在宅避難のほうが体力的にも精神的にもずっと楽で、そのためには水・明かり・トイレの三つが要ります。逆に言えば、この三つさえあれば数日はしのげます。

水は21リットル。明かりは懐中電灯よりランタン型が向いています。手がふさがらず、部屋全体がぼんやり明るくなるだけで不安がかなり減るからです。スマートフォンの充電は、一人暮らしでは情報と連絡の生命線になるので、10000mAh前後のモバイルバッテリーを日常使いのものとは別に一つ、満充電で置いておきます。

一人暮らしの備えは「量を減らす」のではなく「使い切れる形にする」のがこつです。

非常食も、5年保存の専用食品を大量に買うより、レトルトカレーやパスタ、缶詰など普段食べるものを少し多めに置いて食べたら買い足すローリングストックのほうが、一人分では無駄が出ません。品目や置き場所の具体例は一人暮らしの防災グッズで詳しくまとめています。

夫婦二人・共働きの備え

夫婦二人の世帯でいちばん抜けやすいのは、モノではなく取り決めです。平日の昼間に大きな地震が起きたら、二人は別々の場所にいます。電話はまずつながりません。そのときにどうするかを、あらかじめ一度だけ話しておくかどうかで、その後の何時間かの心細さがまるで違います。

決めておくことは三つで足ります。安否を伝える手段(災害用伝言ダイヤル171や、家族のメッセージグループなど)、無理に帰らず職場や近くの安全な場所にとどまる場合の判断、そして自宅で落ち合う場合の集合場所です。紙に書いて財布に一枚ずつ入れておくと、スマートフォンの充電が切れても残ります。

モノの面では、二人分の水42リットルと、カセットコンロとボンベがあると生活の質が変わります。温かいものが食べられるかどうかは、体調にも気持ちにも効きます。ボンベは1本でおよそ1時間強の使用が目安なので、6本ほど置いておけば数日分の湯沸かしと調理をまかなえます。

何から手をつけるかの全体像ははじめての防災・全体像で順を追って整理しています。夫婦で読む場合は、この記事を二人で一度眺めてから買い物に行くと、重複買いが減ります。

子育て家庭の備え

お子さんのいるご家庭の備えは、中身が半年で古くなるという点がほかと決定的に違います。おむつのサイズは上がり、離乳食は進み、去年ちょうどよかった靴は履けなくなっています。ですから子育て家庭では「揃えること」より「見直す周期を決めること」のほうが大事です。季節の変わり目ごと、あるいは3か月に一度、中身を出して確認する日を決めてしまうのが確実です。

赤ちゃんのいるご家庭では、液体ミルクが備えの中心になります。お湯も哺乳瓶の消毒も要らず、常温のまま飲ませられるので、水と燃料が限られる状況では圧倒的に楽です。ただし普段からまったく飲ませたことがないと、いざというときに口をつけないことがあります。買い置きのうちの1本を、たまに普段の授乳で使ってみてください。

幼児から小学生のお子さんの場合は、退屈と不安への備えが要ります。慣れた絵本やぬり絵、小さなおもちゃをひとつ入れておくだけで、避難先でも自宅の停電中でも、親御さんの手が空きます。

年齢別の中身は子どもの防災グッズに、月齢の細かい注意点は赤ちゃんのいる家庭の備えにまとめました。

高齢の家族がいる家庭の備え

高齢のご家族がいる場合、備えの優先順位ははっきりしています。代えのきかないものが最上位です。常備薬、眼鏡、入れ歯と洗浄剤、補聴器の電池。これらは避難所の支援物資では届きませんし、薬は処方がないと手に入りません。

まずお薬手帳をスマートフォンで撮影し、あわせてコピーを一枚、持ち出し袋に入れてください。薬の名前と量が分かれば、避難先の医療班で対応してもらえる可能性が高くなります。お金はかからず、5分で終わります。

食べるものは、やわらかさで選び直す必要があります。乾パンや硬いビスケット中心の備蓄は、噛む力が落ちている方には向きません。おかゆのレトルト、缶詰の煮物、栄養補助のゼリー飲料など、そのまま食べられて飲み込みやすいものを混ぜておきます。

それから、トイレです。高齢の方は回数が多く、我慢すると水分を控えてしまい、脱水や体調悪化につながります。携帯トイレは1人1日5回として、家族の人数分×日数で数えます。二人暮らしで3日分なら30回分。数が多く感じますが、これは削らないほうがいい項目です。

介護度や同居・別居によって変わる点は高齢の家族がいる家庭の備えで個別に触れています。

毛布を敷いた猫用のキャリーケース

ペットがいる家庭の備え

我が家には5歳の黒猫がいます。防災の準備を始めたとき、いちばん後回しになっていたのが猫の分でした。人間の備蓄は箱で買えるのに、猫のフードは「いつものあれ」でないと食べてくれないからです。

ペットの備えは、支援物資が届きにくい前提で考えます。フードは最低5日分、できれば1週間から2週間分。療法食を食べている子は、代わりがきかないので特に多めです。いつものものを一袋余分に買って、開けたら次を買う。人間のローリングストックとまったく同じやり方で回せます。

もう一つ、モノより大事なのがキャリーケースに慣れているかどうかです。普段しまい込んでいるキャリーは、猫にとって「病院に行く箱」でしかありません。部屋の隅に出しっぱなしにして、中で昼寝をするようになれば合格です。うちのモカも、最初は近寄りもしませんでしたが、毛布を敷いてしばらく置いておいたら、今では勝手に入って寝ています。避難のときに捕まえられないという事態は、これで防げます。

一緒に連れて避難する前に確認したいこと

避難所によっては、ペットの受け入れ方法(同行のみか、同室が可能か)が異なります。お住まいの自治体の防災ページやハザードマップに記載があるので、平時のうちに一度確認しておくと、当日迷いません。

フードの量の目安、トイレ用品、ワクチン記録の持ち方はペットのいる家庭の防災にまとめています。

住まい別の注意:マンション・賃貸・戸建て

家族構成と同じくらい、住まいの形も備えの中身を変えます。

マンションの中高層階では、停電でエレベーターが止まった時点で、水も物資も階段で運ぶことになります。2リットルのボトル6本入りの箱はおよそ12キロ。これを10階まで運ぶ現実を想像すると、あらかじめ部屋に置いておく意味がはっきりします。もう一つ、集合住宅特有の注意として、地震のあとは建物の排水管が壊れていないと確認できるまでトイレを流さないという原則があります。流した水が下の階の部屋に噴き出すことがあるためです。だからこそマンションでは携帯トイレの優先度が戸建てより高くなります。

賃貸では、壁や天井に穴を開けられないという制約があります。ただし家具の転倒対策をあきらめる必要はありません。突っ張り棒タイプの器具、家具の下に噛ませる転倒防止プレート、粘着マット、扉が開かないようにする耐震ラッチ。どれもねじを使わずに設置できます。

戸建ての場合は、固定できる自由がある分だけ、やり残しが目立ちます。背の高い家具をL字金具で壁の下地に留める、窓に飛散防止フィルムを貼る。この二つを済ませておくと、寝室と廊下の安全性がはっきり上がります。

詳しくはマンションでの在宅避難賃貸でできる家具の転倒対策をご覧ください。

迷ったら、まず1つだけ

ここまで読んで、やることが多いと感じた方もいると思います。全部を今週中に揃える必要はまったくありません。むしろ一度に完璧を目指した備えほど、点検されないまま押し入れの奥で賞味期限を迎えます。

どこから手をつけるか迷ったら、水からにしてください。理由は単純で、家族構成にも住まいの形にも関係なく必ず要るからです。次の買い物で2リットル6本入りを1箱だけ買って、キッチンの床に置く。飲んだら買い足す。これだけで、備えの中でいちばん重い部分が動き出します。

それができたら次は携帯トイレ、その次は明かりとモバイルバッテリー。この順番で足していけば、半年もあれば一通りの形になります。

年に一度、9月1日の防災の日あたりに中身を見直す日を決めておくと、それ以上のことを考えなくて済みます。点検の手順は防災の日チェックリストにまとめました。ここまでできていれば、ご家庭の備えとしては十分です。あとは日常を続けながら、少しずつ足していきましょう。

家族構成が複数当てはまります。どれを優先すればいいですか。

代えのきかないものを持つ人を優先してください。常備薬が必要な方、月齢に合ったミルクが要る赤ちゃん、療法食のペットの順です。支援物資で代替できる水や食料は、あとから足しても間に合います。

備蓄は3日分と1週間分、どちらで考えればいいですか。

まず3日分を全項目そろえ、そのあと水と食料だけを1週間分に伸ばすのが無理のない進め方です。大規模な災害では支援が届くまで数日以上かかることがあり、水は特に不足しやすいためです。

賞味期限の管理が続きません。

専用の保存食を減らし、普段食べるレトルトや缶詰を1〜2食分多めに置く形に切り替えてください。日常の食卓で消費されるので、管理そのものが不要になります。

価格や製品の入手状況は変わりますので、購入前に最新の情報をご確認ください。避難所の受け入れ方法やハザードマップなど地域ごとの情報は、お住まいの自治体および気象庁の案内が一次情報になります。

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