ハザードマップの種類は6つ|洪水・内水・土砂・津波・地震・火山

浸水想定が色分けされたハザードマップの紙面

「ハザードマップを見ましょう」と言われても、実は一枚の地図ではありません。洪水は洪水、土砂は土砂と、災害の種類ごとに別々に作られているので、一種類だけ見て安心してしまうことがよくあります。この記事では、家庭で押さえておきたい6つの種類と、それぞれ何が分かるのか、そして自分の住まいではどれから見ればいいのかを整理します。最後に、複数の危険をまとめて確認できる「重ねるハザードマップ」の使い方も紹介します。

目次

ハザードマップの種類は主に6つ

家庭で確認したいハザードマップは、洪水・内水氾濫・土砂災害・高潮/津波・地震・火山の6つにまとめられます。国土交通省のハザードマップポータルサイトでも、この分類にほぼ沿った形で情報が公開されています。まずは全体像を表で見てください。

種類想定している災害主な確認先
洪水川があふれる(外水氾濫)重ねるハザードマップ/市区町村
内水氾濫雨水が排水しきれずあふれる重ねるハザードマップ/市区町村
土砂災害がけ崩れ・土石流・地すべり重ねるハザードマップ/都道府県
高潮・津波台風の高潮、地震による津波重ねるハザードマップ/市区町村
地震揺れやすさ・液状化・建物被害市区町村の被害想定図/J-SHIS
火山噴石・火砕流・火山灰・融雪型泥流火山周辺の自治体・火山防災協議会

このうち前半の4つは「重ねるハザードマップ」で全国どこでも同じ画面から見られます。一方で地震と火山は、自治体ごとの被害想定に基づく地図が中心になるため、お住まいの市区町村のサイトを開くのが近道です。

洪水(川があふれる外水氾濫)

川の水が堤防を越えたり壊したりして市街地に流れ込む、いわゆる外水氾濫を想定した地図です。浸水する範囲と深さが色分けされ、多くは「想定最大規模」(おおむね千年に一度クラスの雨)と「計画規模」の2通りが用意されています。最大規模のほうを見ると真っ赤になって驚くことがありますが、これは最悪の想定であって、まずは深さの数字を落ち着いて確認してください。

深さ3メートルを超えると2階まで水が来る計算です。あわせて、水が引くまでの時間を示す「浸水継続時間」も見ておくと、在宅避難ができる場所かどうかの判断材料になります。

内水氾濫(雨水があふれる)

下水道や側溝が雨量に追いつかず、行き場をなくした雨水が地表にあふれるのが内水氾濫です。川から離れていても起きますし、都市部では道路が川のようになり、地下室や半地下の駐車場に水が流れ込みます。ゲリラ豪雨で毎年のように被害が出ているのは、この内水氾濫のほうです。

ただし内水ハザードマップは、洪水と比べて公表している自治体が限られます。見つからない場合は、周囲より低くなっている土地かどうか、雨のあとに水たまりが残る場所がないかといった、日常の観察が手がかりになります。

土砂災害

がけ崩れ(急傾斜地の崩壊)、土石流、地すべりの3種類について、危険な範囲が指定されています。地図上では黄色の「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」と、赤の「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」で区別されているのが特徴です。

レッドゾーンは建物が壊れるおそれのある範囲で、建築に制限がかかることもあります。中古住宅や土地を検討中なら必ず確認してください。

土砂災害は、洪水と違って発生から到達までが数十秒という速さです。範囲に入っているなら、雨の降り方で早めに動く前提で考えておきます。

高潮・津波

高潮は台風などの低気圧と強風で海面が持ち上がる現象、津波は地震によるものです。原因が違うので地図も別々に作られていますが、どちらも沿岸部で浸水の深さを示す点は共通しています。

津波のマップでは、浸水域だけでなく津波避難ビルや避難場所の位置も一緒に載っていることが多いので、そこまで含めて見ておくと役に立ちます。海から数キロ離れていても、川をさかのぼる形で津波が届く地域があります。「海が見えないから関係ない」と決めつけないことです。

地震(震度・液状化)

地震のハザードマップは、想定される地震での揺れの大きさを示す「揺れやすさマップ」、液状化の起きやすさを示す「地盤被害(液状化)マップ」、建物の壊れやすさを示す「建物被害マップ」などに分かれています。多くは市区町村が被害想定調査をもとに作成しています。

全国共通で見られるものとしては、防災科学技術研究所の「J-SHIS 地震ハザードステーション」があり、地表の揺れやすさ(表層地盤増幅率)や、今後30年間に強い揺れに見舞われる確率を住所単位で確認できます。

火山

活火山の周辺では、噴石が飛ぶ範囲、火砕流や溶岩流が到達しうる範囲、降灰の量などを示した火山ハザードマップが作られています。火山防災協議会が噴火警戒レベルと避難計画をセットで検討しているため、地図と一緒に「レベルいくつでどう動くか」が示されているのが他の災害と違うところです。

火山の近くに住んでいない場合でも、降灰は風に乗って広い範囲に届きます。灰は水を含むと重く、目や呼吸器にも入ります。マスクとゴーグル、そして雨どいや排水溝の詰まりを想定しておく程度で、遠方の家庭は十分です。

スマホでハザードマップを開いて自宅周辺を確認する様子

どれを見ればいい?住まいのタイプ別の優先順位

6種類を全部きちんと読み込むのは、正直なところ骨が折れます。まずは自分の住まいで起こりやすいものから順に見てください。

  • 川の近く・低地の戸建て → 洪水 → 内水 → 地震(液状化)
  • 都市部のマンション低層階・半地下 → 内水 → 洪水 → 地震
  • 斜面や造成地のそば → 土砂災害 → 地震(揺れやすさ)
  • 沿岸部 → 津波 → 高潮 → 洪水
  • 内陸の市街地 → 地震 → 内水

マンションの上層階でも、浸水想定区域なら停電・断水・エレベーター停止が現実的な影響として出ます。「浸水しないから無関係」ではなく、浸水域の中にいるかどうかで在宅避難の準備が変わります。

ここまで見て、自宅が主要な想定区域に入っていなければ、あとは地震への備えに力を回して構いません。全部の地図を完璧に読み解く必要はなく、自分の家に関係する2〜3種類を押さえれば十分です。

避難経路を書き込んだハザードマップとマーカーペン

「重ねるハザードマップ」で複数の危険をまとめて見る

種類ごとに別サイトを行き来するのは大変なので、国土交通省・国土地理院が運営するハザードマップポータルサイトの「重ねるハザードマップ」を使うのが早道です。洪水・内水・高潮・津波・土砂災害の情報を、1枚の地図に重ねて表示できます。

あわせて、道路の冠水想定などの道路防災情報や、その土地がもともと谷だったか台地だったかが分かる「地形分類」も重ねられます。地形分類は、ハザードマップに色がついていない場所のリスクを推し量るのに役立つ情報です。

同じサイトの「わがまちハザードマップ」からは、市区町村が作った地図(地震や火山を含む)へたどれます。重ねるハザードマップで大枠をつかみ、詳細は自治体の地図で確認する、という二段構えが分かりやすいはずです。

<:::box 見るときに一緒にやっておきたいこと>

【見るときに一緒にやっておきたいこと】

自宅だけでなく、職場・学校・実家の3か所も同じ手順で見ておく。

浸水想定区域なら、避難先までの経路上にアンダーパスや川がないかを確認する。

確認した結果はスクリーンショットで残し、家族と共有しておく。

ハザードマップは、堤防の整備や想定の見直しで内容が更新されます。数年前に見たきりなら、9月の防災の日あたりを目安に開き直してみてください。我が家では、猫のモカを連れて動くことを前提に、経路の途中で抱えられる距離かどうかまで見るようにしています。

よくある質問

洪水と内水氾濫の違いは?

水の出どころが違います。洪水(外水氾濫)は川の水があふれて市街地に流れ込むもので、大きな川の近くほど深く浸水します。内水氾濫は、下水道や排水路が処理しきれなかった雨水がその場であふれるもので、川から離れた場所でも起こります。内水は浸水の深さが数十センチ程度でも、地下や半地下では致命的になります。両方の地図を見て、どちらの色もついていないかを確かめてください。

液状化のマップはどこで見られる?

多くは市区町村や都道府県が公表している地震被害想定の「地盤被害(液状化)マップ」で、自治体サイトの防災ページやハザードマップポータルの「わがまちハザードマップ」からたどれます。全国共通で揺れやすさを見たい場合は、防災科学技術研究所のJ-SHISが使えます。埋立地、旧河道、砂丘のふちなど、砂と地下水がそろった地盤で起こりやすい現象です。

賃貸や購入のときにも関係しますか?

関係します。2020年8月から、不動産取引の重要事項説明で、水防法に基づく水害ハザードマップ上の物件の位置を説明することが義務づけられています。説明を受ける前に自分でも見ておくと、内見のときに「この道路は冠水しやすいですか」といった具体的な質問ができます。

まとめ|前回・次回

ハザードマップは6種類。全部を読み込む必要はなく、住まいのタイプに合う2〜3種類を、重ねるハザードマップで一度に確認するのが現実的な進め方です。見て終わりにせず、浸水域なら在宅避難用の水と電源、土砂の警戒区域なら早めに動く判断、と備えの中身に一つだけつなげてください。

ハザードマップそのものの見方や色の読み取り方はハザードマップの見方の基本で解説しています。地図で避難先を確認したあと、避難所と避難場所の違いに迷ったら避難所と避難場所の違いもあわせてどうぞ。

なお、区域の指定や想定は見直されることがあります。最新の内容は各自治体・ハザードマップポータルサイトの表示でご確認ください。

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