大雨や地震の報道が流れたとき、まずスマホで情報を探して、いくつもサイトを開いているうちに時間が過ぎてしまう——そんな経験はありませんか。防災情報は「どこを見るか」を平時に決めてしまえば、いざというときの迷いがぐっと減ります。この記事では、家庭で押さえておきたい公式の情報源を種類ごとに整理し、ブックマークのまとめ方、テレビ・ラジオ・アプリの使い分け、停電や通信障害のときの情報のとり方までをお伝えします。
災害時、正しい情報にたどり着く道を先に作っておく
災害が起きてから情報源を探し始めると、どうしても不利になります。回線が混み合ってページが開きにくくなりますし、検索結果の上位に過去の災害の記事が混ざることもあります。落ち着いて読み比べる余裕がない状況で、初めて見るサイトの見方を覚えるのは現実的ではありません。
そこで私がおすすめしているのが、スマホのブックマークに「防災」フォルダをひとつ作り、平時のうちに数件だけ入れておくというやり方です。数を増やすほど探す手間が増えるので、多くても5〜6件で十分です。
入れておくものは、役割の違う三つの層で考えると迷いません。ひとつ目は全国の危険度がわかるもの(気象庁)、ふたつ目は自分の街の判断が出るもの(市区町村の防災ページ)、三つ目は足元の状況がわかるもの(河川の水位・ライブカメラ、道路情報)です。この三つは代わりが利きません。気象庁は避難指示を出しませんし、自治体は隣の市の川の水位までは知らせてくれないからです。
「全国の危険度」「自分の街の判断」「足元の状況」の3層をそろえるのが、情報源選びの基本です。

公式情報源の一覧:今日ブックマークしておく
具体的にどこを登録すればよいのか、役割ごとにまとめます。どれも国や自治体、公的機関が運営しているもので、無料で使えます。
| 情報源 | 見るもの | 層 |
|---|---|---|
| 気象庁ホームページ | 警報・注意報、キキクル、台風情報、地震情報 | 全国の危険度 |
| お住まいの市区町村の防災ページ | 避難情報、避難所の開設状況、断水・給水 | 自分の街の判断 |
| 自治体の防災メール・公式LINE | 避難情報などのプッシュ通知 | 自分の街の判断 |
| 川の防災情報(国土交通省) | 河川の水位、雨量、ライブカメラ | 足元の状況 |
| 日本道路交通情報センター | 通行止め・規制情報 | 足元の状況 |
気象庁(警報・キキクル・台風情報)
気象庁のサイトは、雨・風・台風・地震・津波のすべてが一か所にまとまっています。家庭で使うなら、まず「キキクル(危険度分布)」を覚えてください。土砂災害・洪水・浸水の危険度が地図上で色分けされていて、自分の家のあたりが今どの段階なのかを、文章を読まなくても一目で確認できます。
ひとつ注意しておきたいのが、防災気象情報の体系が2026年5月28日から新しくなったことです。気象庁の発表によると、これまでの「大雨警報」は「レベル3大雨警報」、「大雨特別警報」は「レベル5大雨特別警報」という名称になり、その間の警戒レベル4にあたる「危険警報」が新設されました。あわせてキキクルも整理され、洪水と浸水の危険度をひとつの地図で見られる「大雨キキクル」になっています。情報の名前に警戒レベルの数字が付いたのが、家庭にとっていちばん大きな変化です。数字が大きいほど危険な状況、と覚えておけば、耳で聞いたときにも判断しやすくなります。
キキクルの色の意味や具体的な見方は、別記事で詳しく扱っています。あわせてキキクル(危険度分布)の見方もご覧ください。
自治体の防災ページと防災メール
避難指示や高齢者等避難といった避難情報を出すのは、気象庁ではなく市区町村です。避難所がどこに開設されたか、断水しているか、給水車がいつ来るかも、すべて自治体の情報になります。つまり最終的に行動を左右する情報は、お住まいの市区町村から出るということです。
ブックマークするのは、市のトップページではなく防災ページそのものにしてください。トップページからだと、アクセスが集中しているときに何度もタップして進むことになります。
あわせて、自治体の防災メールか公式LINEの登録も済ませておきましょう。自分から見に行かなくても届くのが強みで、寝ている間に状況が変わったときに気づけます。登録は自治体のサイトから数分で終わります。私は登録のとき、通知が来る地域を自宅だけでなく、離れて暮らす家族の住む市も追加しています。
河川・道路のライブ情報
大雨のときに知りたいのは、結局「近くの川がどうなっているか」です。国土交通省の「川の防災情報」では、全国の河川の水位・雨量と、河川に設置されたライブカメラの映像をまとめて見られます。水位の数値だけではぴんと来なくても、カメラの映像を見れば、ふだんとどれくらい違うかがすぐわかります。
ただし、映像が見られるからといって、川や用水路の様子を自分の目で確かめに行くのはやめてください。カメラは、外に出ずに済ませるためのものです。
車を使う予定があるなら、日本道路交通情報センターの通行止め・規制情報も見ておくと、遠回りや引き返しの判断が早くなります。
テレビ・ラジオ・アプリの使い分け
情報源はサイトだけではありません。それぞれ得意なことが違うので、重ねて持っておくと安心して過ごせます。
テレビは、地震や津波のような突発的な出来事で強さを発揮します。速報が最も早く、映像で全体像がつかめます。一方で、全国放送では自分の市の避難所までは扱いません。地域の細かい情報は、地元のラジオやコミュニティFMのほうが手厚いことが多いです。
スマホアプリは、プッシュ通知で「気づける」のが最大の価値です。防災速報系のアプリは、地点を登録しておけば緊急地震速報や大雨・避難情報を知らせてくれます。ここでひとつだけコツをお伝えすると、通知はアプリを増やすほど鳴りやすくなり、かえって鈍くなるということです。同じ内容が三つのアプリから届くと、そのうち見なくなります。通知を受け取るのは1〜2本にしぼり、地点も自宅と実家くらいにとどめるほうが、いざというときに手が伸びます。
アプリの選び方や設定のしかたは、はじめての防災・情報収集の準備で具体的に整理しています。

停電・通信障害のときの情報のとり方
ここまでの情報源は、電気とネットが生きていることが前提です。実際の災害では、その前提が崩れることがあります。停電が長引けばスマホの充電が尽きますし、基地局が止まれば圏外になります。
このときに残るのが、電池で動くラジオです。radikoのようなアプリはネット回線を使うので、通信が途切れれば聞けません。電波で直接受信できるラジオが1台あるかどうかで、情報の途切れ方がまったく変わります。手回し充電やライトの付いた製品もありますが、まずは乾電池で動いて、地元のAM/FMが受信できることを優先してください。選び方は防災ラジオの選び方にまとめています。
スマホを生かすためには、モバイルバッテリーの残量確認が欠かせません。私は防災用品の点検日を月に一度決めて、そのときにバッテリーの残量も見るようにしています。
連絡手段も分けて考えておきましょう。通話は混み合いやすい一方で、災害用伝言ダイヤル「171」やインターネット版の「web171」は、安否を伝えるために用意されている仕組みです。171は電話をかけて、録音なら1、再生なら2を押し、相手の電話番号を入力するだけで使えます。web171に登録した文章は171から音声で聞くことができ、171に録音した声はweb171で再生できます。
使う前に一度、家族で練習しておく
災害用伝言ダイヤルとweb171には体験利用日があり、毎月1日と15日、正月三が日、防災週間(8月30日〜9月5日)、防災とボランティア週間(1月15日〜21日)に無料で試せます。誰の電話番号を「集合場所」にするかを決めて、実際に録音と再生をしてみてください。使い方より、番号を決めておくことのほうが大事です。
SNSの情報との付き合い方
SNSは速さでは群を抜いていますが、そのぶん確認されていない情報も同じ速さで流れます。使わないという選択より、使い方を決めておくほうが実用的です。
私が家族に伝えているのは、次の3点だけです。
- フォローするのは、気象庁・自治体・警察・消防・鉄道会社などの公式アカウントに限る
- 投稿を見たら、まず発信元と投稿時刻を確認する(過去の災害の画像が再び出回ることがあります)
- 本当かどうか判断できない情報は、拡散も転送もしない
転送する前に、同じ内容が自治体や気象庁のページに出ているかを確認する。出ていなければ、まだ広めるべき情報ではありません。
不確かな情報の見分け方は、災害時のデマとの向き合い方で掘り下げています。
よくある質問
情報が多すぎて混乱する 最低限どれを見ればいい?
迷ったら、自治体の防災ページとキキクルの2つで構いません。「自分の街で何をすべきか」は自治体から、「今どのくらい危ないか」はキキクルからわかります。この2つで判断の土台はできあがります。
そのうえで、通知が届く手段(防災メールかアプリ1本)を足せば、見に行かなくても気づける形になります。全部そろえようとして、どれも中途半端に登録するくらいなら、この3つだけを確実にしておくほうが役に立ちます。ここまでできていれば、家庭の備えとしては十分です。
離れた家族と情報を共有するには?
大切なのは、災害が起きてから相談しないことです。連絡手段と集合先を、平時に一度だけ決めておくと、当日の迷いがなくなります。
具体的には、災害用伝言ダイヤルで使う電話番号を家族全員で1つに決めておくこと、家族のグループトークを作っておくこと、そして自分のスマホの防災アプリに実家の地点も登録しておくことです。高齢の家族がスマホでの操作に不慣れな場合は、171の使い方を紙に書いて電話のそばに貼っておくと確実です。文字が小さいと読めませんので、大きめに書いてください。
連絡がつかないときに、無理に電話をかけ続けないことも決めておきましょう。回線が混み合っている時間帯は、つながらないこと自体が異常ではありません。
まとめ|前回・次回
防災情報は、種類を覚えることよりも「どこを見るかを先に決めておくこと」のほうがずっと効きます。気象庁で全国の危険度を、自治体で自分の街の判断を、河川・道路の情報で足元の状況を確認する。この3層をブックマークにまとめ、通知が届く手段を1つ足せば、家庭の情報収集の形はできあがります。今日できるのは、ブックマークフォルダを作ることと、自治体の防災メールに登録すること。この2つだけで、いざというときの動き出しが変わります。
前回は、緊急地震速報が鳴ったときの受け止め方を扱いました。次回は、この記事でも触れたキキクルの色の見方を、実際の画面に沿って詳しく解説します。
なお、防災気象情報の名称や運用は見直されることがあります。制度の最新の内容は気象庁の公式サイトでご確認ください。
