大雨のニュースで「キキクルで危険度を確認してください」と呼びかけられても、名前だけでは何のことか分かりにくいものです。キキクルは気象庁が無料で公開している地図で、雨による災害の危険度が今どこまで高まっているかを色で見られます。この記事では、色の意味と自分の家を確認する手順、通知を受け取る方法、そして2026年5月に変わった新しい体系での見方までを、家庭で使う目線で整理します。
キキクルとは:気象庁の「危険度分布」の愛称
キキクルは、気象庁が発表している「危険度分布」の愛称です。2021年3月に公募で決まった名前で、「危機が来る」を知らせるという意味が込められています。難しい名前で使われないままだった情報に、覚えやすい呼び名を付けたわけです。
中身はごくシンプルで、雨によって災害が起きる危険度を、地図上のマス目ごとに5段階の色で塗り分けたものです。天気予報のように「これから降るか」を見るものではなく、「これまで降った雨と、この先数時間の雨で、その場所がどれくらい危ないか」を見るための地図だと考えてください。更新は10分ごとなので、雨が強まっている最中に何度も見返す使い方に向いています。
雨雲レーダーとの違いも押さえておくと迷いません。レーダーは空の状態、キキクルは地面の状態を表します。同じ1時間50mmの雨でも、すでに何日も降り続いた斜面と、乾いていた土地とでは危険度がまったく違います。その積み重ねを計算に入れてくれるのがキキクルです。
キキクルでわかる危険:浸水・洪水・土砂の3つ
キキクルは災害の種類ごとに分かれています。土砂キキクルは、がけ崩れや土石流の危険度を示します。浸水キキクルは、短時間の強い雨で排水が追いつかず、低い土地や道路がつかる内水氾濫の危険度です。洪水キキクルは、中小河川があふれる危険度を示します。
この3つに加えて、2026年5月の防災気象情報の見直しで「大雨キキクル」が新設されました。浸水と洪水の危険度を1枚の地図に重ねて表示するもので、川からの氾濫と、その場に降った雨による浸水を、切り替えずに一度で見渡せます。住宅地では両方が同時に迫ることも多いので、まず大雨キキクルで全体を見て、気になる色があれば浸水・洪水それぞれに切り替える——という順番が実用的です。
自宅の地形で見るべき種類は決まります。斜面や崖のそばなら土砂、川のそばなら洪水、周りより低い土地なら浸水を優先して見てください。

使い方:色の見方と自分の場所の確認手順
色の意味は4種類とも共通です。数字だけの情報より、色のほうが家族にも伝えやすいのが利点です。
| 色 | 意味 | 相当する警戒レベル |
|---|---|---|
| 黄 | 注意 | レベル2相当 |
| 赤 | 警戒 | レベル3相当 |
| 紫 | 危険 | レベル4相当 |
| 黒 | 災害切迫 | レベル5相当 |
かつては紫が薄い紫と濃い紫に分かれていましたが、2022年6月の変更で紫は1色に統合され、最も深刻な段階として黒が加わりました。黒は「すでに災害が発生していてもおかしくない」段階で、その色を見てから動き出すのでは遅い、という位置づけです。
確認の手順は次のとおりです。雨の最中に初めて操作すると手間取るので、晴れた日に一度なぞっておくことをおすすめします。
検索窓に「キキクル」と入れ、気象庁のページを開きます。ブックマークかホーム画面に追加しておきます。
画面上部で「大雨」「土砂」「浸水」「洪水」を切り替えます。まずは大雨キキクルで全体を見ます。
地図を自宅付近まで拡大します。マス目が細かくなるほど、自分の家がどのマスに入るかが分かります。
自宅や実家、職場を登録しておくと、次回から一発で表示できます。高齢の家族の家も入れておくと安心して確認できます。
雨が強い時間帯は10分ごとに更新されます。同じ色でも、周囲が黄から赤へ広がっているなら状況は悪化しています。
アプリはある?無料?通知を受け取る方法
まず料金ですが、キキクルは気象庁のホームページで誰でも無料で見られます。会員登録もいりません。一方で、気象庁が出している専用のキキクルアプリというものはありません。ブラウザで開くのが基本の使い方です。
ただ、雨の夜に自分から見に行くのは現実的ではありません。そこで用意されているのが、気象庁が民間の事業者と連携して提供している「キキクルの通知サービス」です。登録した地域の危険度が高まったときに、アプリのプッシュ通知やメールで知らせてくれます。対応している事業者の一覧は気象庁のサイトにまとまっていて、無料で使えるものが中心です。事業者ごとに通知の条件(どの色から知らせるか)や対象地域の登録数が違うため、選ぶときはそこを見比べてください。提供事業者や料金体系は変わることがあります。
我が家では、自宅と離れて暮らす高齢の家族の地域を両方登録しています。通知が来たときに電話をかける相手が決まっているだけで、慌て方がずいぶん変わります。
通知は「紫(レベル4相当)で鳴る」設定になっているか、登録後に一度確認してください。

警戒レベルとの関係:紫・黒が出たらどうする
キキクルの色は、市町村が出す避難情報の警戒レベルと対応するように作られています。ここは2026年5月28日から大きく変わった部分です。それまでは同じレベル4相当でも、土砂災害なら「土砂災害警戒情報」、河川なら「氾濫危険情報」と呼び名がばらばらでした。新しい体系では、大雨・洪水・土砂災害・高潮の4分野で名称が整理され、「レベル4大雨危険警報」のように、情報の名前の先頭にレベルの数字が付くようになりました。レベル4に相当する情報は「危険警報」という共通の呼び方に統一されています。
つまり、地図の紫と、発表される「レベル4○○危険警報」は同じ段階を指しています。数字と色のどちらから見ても同じ結論にたどり着けるようになった、と考えると分かりやすいです。
紫は、市町村の避難指示(警戒レベル4)と同じ段階です。避難するかどうかの判断そのものは、お住まいの市町村が出す避難情報に従ってください。
黒まで待たないことが肝心です。黒は避難が完了しているべき段階として設計されています。
夜間や雨のピーク時に外へ出るほうが危ない場面もあります。移動の可否を含めた判断は、市町村の避難情報と現地の状況を優先してください。
警戒レベルそのものの中身は警戒レベル1〜5の意味と、家庭がとる行動で詳しく整理しています。キキクルとあわせて読むと、色と数字がひとつながりになります。
キキクルの限界:地震や小さな川には使えない
便利な情報ほど、できないことを知っておく価値があります。キキクルはあくまで雨に起因する災害のための地図です。地震や津波、噴火はまったく対象外で、地震で緩んだ地盤の危険度も反映されません。地震のあとの雨は通常より危ないのに、地図の色は普段どおりということが起こり得ます。
もうひとつは、川の大きさによる守備範囲の違いです。洪水キキクルが得意なのは中小河川で、大きな川については、国や都道府県が指定した河川ごとの洪水予報が別に発表されます。逆に、名前も付いていないような小さな水路や、市街地の下水は洪水キキクルの計算対象に入りません。そうした場所であふれる水は、浸水キキクルの色と、市町村のハザードマップで補って見ることになります。
そして、色が付いたマスで必ず災害が起きるわけでも、色が薄いマスが絶対に安全なわけでもありません。危険度の高まりを示す推定値であって、発生地点の予告ではないためです。最後は自分の家の立地——斜面が近いか、周りより低いか、川からどれくらい離れているか——と重ねて読むことになります。ここまで分かっていれば、家庭の使い方としては十分です。
よくある質問
まとめ|前回・次回
キキクルは、雨による土砂災害・浸水・洪水の危険度を10分ごとに色で示す、無料の地図です。黄・赤・紫・黒の4色と警戒レベルが対応していて、紫はレベル4、黒はレベル5に相当します。2026年5月の見直しで、浸水と洪水を重ねて見られる大雨キキクルが加わり、発表される情報の名前にもレベルの数字が付くようになりました。
やることは、晴れた日に一度開いて自宅を登録しておくこと。それだけで、いざというときに探す時間がなくなります。
前回は、災害時にどこの情報を見ればいいかを整理した災害情報はどこで確認する?公的な一次情報の集め方でした。次回は、地震のあとに出る特別な呼びかけを扱った南海トラフ地震臨時情報とは?家庭がとる行動です。
なお、色の区分や情報の名称は制度の見直しで変わることがあります。最新の内容は気象庁の公式サイトでご確認ください。
