ハザードマップの見方|自分の街の何がわかる?色の意味から

色分けされた浸水想定が印刷された防災ハザードマップ

防災の備えを考えるとき、最初にお金がかからず、いちばん効果が大きいのがハザードマップを見ることです。水や食料を買い足す前に、そもそも自分の家が水につかる場所なのか、そのまま在宅避難できる場所なのかがわかるからです。この記事では、ハザードマップで何がわかるのか、地図の色が意味する浸水の深さ、見るときの3ステップ、そして「色がついていない=安全」とは言えない理由までをまとめます。

目次

ハザードマップとは:自分の街の危険が地図でわかる

ハザードマップとは、洪水や土砂災害、津波、高潮などの災害が起きたときに、どこがどれくらい危険になるかを地図の上に色で示したものです。作っているのは主に市区町村で、洪水については国や都道府県が公表する「洪水浸水想定区域図」がもとになっています。つまり誰かの予想ではなく、河川ごとに雨量や地形を計算した結果が地図になっている、と考えてください。

ここでわかるのは大きく2つです。ひとつは「自分の家がどの災害の危険にさらされているか」。もうひとつは「どこへ逃げればよいか(指定緊急避難場所・指定避難所の位置)」です。この2つがわかると、備えの優先順位が一気に決まります。浸水が想定されない場所なら在宅避難を前提に備蓄を厚くする、浸水3mの想定なら持ち出し袋と早めの移動を前提にする、というように、同じ「防災グッズ」でも揃えるものが変わってくるからです。

もうひとつ知っておきたいのが、不動産取引での扱いです。2020年8月から、宅地建物取引業者は売買・賃貸の重要事項説明の際に、水害ハザードマップを示して物件の位置を説明することが義務づけられました。住まいを借りたり買ったりした経験がある方は、そのとき地図を見せられているかもしれません。手元に控えがあれば、それが出発点になります。

浸水の深さを段階的に色で示した凡例の一覧

ハザードマップの見方:3ステップ

初めて開くと情報量が多く、どこを見ればいいのか迷います。やることは3つだけです。地図を眺めるのではなく、自分の生活の場所に引きつけて読むのがコツです。

①自宅・職場・学校の場所に印をつける

まず、自宅を探して印をつけます。紙の冊子ならペンで丸を、ウェブの地図なら住所を入力してピンを立てます。そのうえで、職場、子どもや孫の学校、高齢のご家族の家、よく行くスーパーなど、日中いる可能性が高い場所も同じように確認します。災害は家にいるときに起きるとは限りません。我が家でも、夫の勤務先が川沿いだと気づいたのは地図を開いてからでした。

このとき、家の何階に住んでいるか、寝室が何階かもメモしておくと、次のステップの色の意味が具体的になります。

②色の意味を読む:何色が危険?浸水の深さの目安

洪水のハザードマップで塗られている色は、浸水の深さ(浸水深)を表します。薄い黄色から、オレンジ、赤、ピンク、紫へと濃く・強くなるほど深いという並びで、国土地理院の「重ねるハザードマップ」では、0.5m未満/0.5〜3.0m/3.0〜5.0m/5.0〜10.0m/10.0〜20.0m/20.0m以上といった段階で色分けされています。この0.5mや3mという区切りは適当な数字ではなく、1階の床上、2階の床の高さといった建物の高さを意識して決められたものです。

注意したいのは、地図によって凡例が違うことがある点です。「想定最大規模」(考えうる最大級の雨)で作られた地図と、「計画規模」(河川の整備目標にあたる雨)で作られた地図では色の区切りが異なり、古い凡例のまま配布されている冊子もあります。同じ赤でも意味する深さが違うことがあるので、色を見る前に、地図のすみにある凡例を先に読む習慣をつけてください。

色を見る前に凡例を確認する。「想定最大規模」か「計画規模」かで、同じ色でも深さの意味が変わります。

また、色は洪水だけではありません。土砂災害では、警戒区域(いわゆるイエローゾーン)と特別警戒区域(レッドゾーン)が別の色で示されます。津波や高潮、下水があふれる内水氾濫も、それぞれ別の地図として用意されています。自分の地域にどの地図があるのかは、ハザードマップの種類の記事で整理しています。

③避難先と、そこまでの道順を決める

色を確認したら、最後に行き先を決めます。ハザードマップには指定緊急避難場所や指定避難所が記号で載っていますが、大事なのはその避難先が、その災害に対応しているかです。避難場所は災害の種類ごとに指定されていて、地震では使えても洪水では使えない場所があります。地図の凡例に、洪水・土砂災害・地震などのマークが並んでいるはずなので、そこを見比べてください。

道順も、地図の上でたどっておきます。最短ルートが川沿いや地下道、アンダーパスを通るなら、遠回りでも別の道を第二候補にしておきます。ちなみに「避難場所」と「避難所」は役割が違い、混同すると行き先を間違えます。違いは避難場所と避難所の違いの記事で詳しく説明しています。

なお、実際にいつ動くかという判断は、その時々の気象庁や市区町村の発表に従ってください。ここで決めておくのは、あくまで平時の「行き先の候補」です。

浸水50cm・3mはどんな世界?数字を実感に変える

「0.5m」と書かれてもピンときません。ここが実は、ハザードマップを見て終わりにするか、備えにつなげられるかの分かれ目です。数字を暮らしの高さに置き換えてみます。

浸水の深さ暮らしの中でのイメージ
0.5m未満大人のひざ前後。多くの家で床上浸水に迫る高さ。玄関から水が入り、床下の断熱材や畳が水を含む
0.5〜3.0m1階は水没する範囲。3mは2階の床が浸かり始める高さにあたる
3.0〜5.0m2階の居室まで水が来る。一般的な2階建てでは屋内に留まる場所がなくなる
5.0m以上2階建ての家がほぼ水に隠れる。3階建て以上の建物でも階によっては水に届く

この表を自宅の間取りに当てはめると、備えの中身が決まります。浸水0.5m未満なら、在宅避難を前提に水と食料、簡易トイレを厚めに持つ判断ができます。反対に3m以上の色がついているなら、2階に上がるだけでは足りないので、持ち出せる荷物を軽くしておくこと、早い段階で移動する前提で普段から準備しておくことのほうが大事になります。

ペットがいるご家庭は、ここでキャリーの置き場所も見直しておきたいところです。我が家の黒猫のモカは、水音がすると押し入れの奥に入ってしまいます。深い浸水が想定される地域なら、キャリーは玄関近くの取り出しやすい場所に置くほうが動きやすくなります。

もうひとつ、浸水の深さと同じくらい効いてくるのが「水が引くまでの時間」です。地図によっては浸水継続時間が示されており、数日から1週間以上と想定されている地域もあります。深さが浅くても長く続くなら、電気も水道も止まった状態で家に留まることになります。

スマホのハザードマップ画面と折りたたんだ紙の地図

どこで見られる?紙・自治体サイト・重ねるハザードマップ

見る方法は主に3つあります。ひとつめは、市区町村から配布される紙のハザードマップです。転入時や更新時に全戸配布されることが多く、停電しても読めるのが強みです。手元にない場合は、市区町村の窓口で受け取れることがあります。

ふたつめは、国土交通省・国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」です。ここには2種類あり、性格が違います。

重ねるハザードマップ
わがまちハザードマップ
  • 全国どこでも同じ操作で見られる
  • 洪水・土砂災害・津波・道路防災情報などを1つの地図に重ねて表示できる
  • 住所検索で自宅をすぐ表示できる
  • 各市区町村が作った地図へのリンク集
  • 避難所の一覧や地域固有の注意点まで載っている
  • 自治体サイトを探し回らずにたどり着ける

おすすめの使い方は、まず重ねるハザードマップで自宅の状況をざっと把握し、そのうえでわがまちハザードマップから自分の市区町村の地図を開いて、避難先や地域ごとの説明を確認する順番です。全国共通の地図で全体像を、自治体の地図で具体策を、と役割を分けると迷いません。

三つめは、自治体が独自に公開している防災マップやWebGISです。内水氾濫や液状化など、ポータルサイトに載っていない情報を持っていることがあります。

スマホで見られる状態にしておくだけでは足りません。停電と通信障害に備えて、自宅周辺の地図は1枚だけ印刷して玄関に貼るのが確実です。

色が白くても安心ではない ハザードマップの限界

ここがいちばんお伝えしたい部分です。地図が白い(色が塗られていない)ことは、「危険がない」という意味ではありません。理由はいくつかあります。

まず、洪水のハザードマップは対象となる河川を決めて計算しています。小さな川や水路は対象外のことがあり、その氾濫は地図に反映されていません。次に、雨水が排水しきれずに道路や住宅にあふれる内水氾濫は、洪水の地図とは別に作られており、内水の地図がない自治体もあります。都市部で毎年のように起きている浸水の多くはこちらです。

さらに、地図は「ある想定の雨」で計算した結果です。想定最大規模であっても、それを超える降り方が絶対にないとは言えません。土地の造成や盛土・切土、擁壁の状態、建物の構造といった一軒ごとの事情も、地図には表れません。

【白い場所でも確認しておきたいこと】

近くに地図の対象外の小河川や水路がないか

道路より低い土地(半地下の駐車場・地下室)がないか

過去にその場所が浸水した記録が残っていないか

反対に、色がついているからといって、すぐに引っ越しを考える必要もありません。浸水0.5m未満なら家財を高い位置に移す、床上まで来る想定なら2階に寝室を移すなど、住み続けながらできる対策があります。地図は不安を煽るためのものではなく、どこにお金と手間をかけるかを決めるための道具です。ここまで確認できていれば、家庭の備えとしては十分に足りています。

よくある質問

ハザードマップを見れば何がわかる?

自宅や職場が、洪水・土砂災害・津波などでどの程度の危険があるか(洪水なら浸水の深さ)と、指定緊急避難場所・指定避難所の位置がわかります。地図によっては、浸水が続く時間や、家屋が流されるおそれのある区域まで示されています。

種類がいくつもあるのはなぜ?

災害ごとに危ない場所が違うからです。洪水で危ない低い土地と、土砂災害で危ない斜面の近くは、まったく別の場所になります。ひとつの地図にまとめると読みづらくなるため、災害別に作られています。自分の地域で該当する地図だけを見れば十分です。

引っ越し先選びに使ってもいい?

使えます。実際に不動産取引では、2020年8月から重要事項説明で水害ハザードマップを示すことが義務づけられています。ただし色がついている=住めない、ではありません。想定される深さと、建物の階数・構造を合わせて考えるほうが実際的です。

まとめ|前回・次回

ハザードマップは、災害が起きたときにどこがどれくらい危険になるかを色で示した地図です。自宅と日中いる場所に印をつけ、凡例で色の意味(浸水の深さ)を読み、避難先と道順を決める。この3つができれば、家庭の備えとしては大きく前進します。0.5mは床上に迫る高さ、3mは2階の床の高さ——数字を家の高さに置き換えると、買うべきものが自然と絞れてきます。

地図が白くても油断せず、色がついていても慌てない。ハザードマップは、備えの量を決めるための材料だと考えてください。まずは重ねるハザードマップで自宅を検索し、1枚印刷する。今日できるのはそこまでで十分です。

地図で行き先を決めたら、次は「いつ動くか」です。前回の避難指示と警戒レベルの記事と、災害の種類ごとの地図をまとめたハザードマップの種類の記事も、あわせてどうぞ。

なお、区域の指定や凡例、避難所の指定は見直されることがあります。最新の内容は、国土交通省のハザードマップポータルサイトおよびお住まいの市区町村の公式サイトでご確認ください。

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