防災アプリのおすすめと情報の備え|はじめての防災・第7回

防災アプリの警報通知が表示されたスマートフォンの画面

防災の備えというと水や食料に目が行きますが、実際に災害が起きたとき、いちばん最初に必要になるのは「情報」です。この回では、まず入れておきたい防災アプリの選び方を気象・自治体・安否の3系統に整理し、入れた直後にやるべき通知と地域の設定、そしてスマホが使えなくなったときの代わりまでをお伝えします。アプリは入れるだけでは働きません。設定まで済ませて、ようやく備えになります。

目次

情報の備えは、停電と通信障害を前提に考える

防災アプリの話をする前に、前提をひとつ揃えておきます。大きな災害では、スマホが使えない時間帯が生まれることがあります。停電で充電できない、基地局が止まって圏外になる、通信が混み合ってつながりにくくなる——2024年の能登半島地震でも、携帯各社の基地局が停電や伝送路の断線で長く止まった地域がありました。

ですから、情報の備えは二段構えで考えます。一段目はスマホとアプリ、二段目は電池で動くラジオと紙のメモです。一段目だけに頼ると、いちばん情報が欲しい局面で手が止まります。とはいえ、まずは一段目を整えるところからで十分です。アプリは無料で、今日の夜のうちに終わります。

もうひとつ。アプリを入れる目的は「常に最新情報を追いかけること」ではありません。必要なときにこちらへ届くようにしておくことです。普段は画面を開かなくていい、というのが良い設定の状態です。

防災アプリのおすすめ:まず入れておく定番

防災アプリは数えきれないほどありますが、役割で分けると3系統しかありません。気象・災害の速報、住んでいる自治体の情報、家族の安否です。この3つが埋まっていれば、個数を増やす意味はほとんどありません。

気象・警報系の定番アプリ

まず1本目は、地震・大雨・津波などの速報を受け取るアプリです。代表的なのは次の3つで、いずれも無料で使えます。

アプリ提供向いている人
Yahoo!防災速報LINEヤフー地震・豪雨・避難情報を幅広く、複数地点で受け取りたい
NHK ニュース・防災NHK報道としての続報や、災害時のライブ配信も見たい
特務機関NERV防災ゲヒルン通知の速さと、余計な情報の少なさを重視したい

Yahoo!防災速報は現在地に加えて複数の地点を登録でき、離れて暮らす家族の地域を入れておけます。NHKニュース・防災は速報のあとの「で、どうなっているのか」が追いやすいのが利点です。特務機関NERV防災は気象庁の情報を扱う気象業務支援センターからデータを直接受け取っており、通知が速く、画面も文字中心で読みやすく作られています。

この3つのうち、まず1本。迷ったらYahoo!防災速報を入れて、地域を登録するところまでやれば今日の分は終わりです。

自治体・地域情報のアプリ

2本目は、お住まいの自治体の情報です。避難所がどこに開設されたか、給水はいつどこで行われるかといった、生活に直結する情報を出すのは市区町村です。全国向けのアプリでは、そこまで細かくは届きません。

自治体によって形はさまざまで、独自の防災アプリを出しているところ、防災メールの登録制のところ、公式LINEで配信しているところがあります。「〇〇市 防災 メール」で調べると、たいてい登録ページに行き当たります。アプリより先に、この自治体の配信登録を済ませたほうが効きます。無料で、登録は数分です。

あわせて、自治体の公式X(旧Twitter)アカウントもフォローしておくと、停電や断水の復旧見込みが流れてくることがあります。ただし情報源として頼るのは公式アカウントまでにして、個人の投稿を根拠にしないことが大切です。

家族の安否・位置がわかるアプリ

3本目は安否です。災害時は電話がつながりにくくなり、家族に連絡が取れないこと自体が大きな不安になります。ここは新しいアプリを入れるより、すでに使っているものを決めておくほうが確実です。

連絡手段としては、通話より通信量の少ないLINEなどのメッセージのほうが届きやすい傾向があります。それも難しいときのために、NTTの「災害用伝言ダイヤル(171)」と「災害用伝言板(web171)」があります。どちらも毎月1日・15日や防災週間などに体験利用ができますので、一度家族で試しておくと本番で迷いません。

位置の共有は、iPhoneなら標準の「探す」、AndroidやiPhone共通ならGoogleマップの現在地共有が使えます。新しくアプリを増やさずに済みます。我が家では夫と互いに位置を共有していますが、平時は見ません。連絡がつかないときの最後の手段として置いてあるだけです。

家族で決めておくのは「どのアプリで連絡するか」と「つながらないときは171を使う」の2点だけで十分です。

防災アプリの通知設定をオンにする手元の様子

アプリを入れたらやる初期設定:通知と地域登録

ここがこの回でいちばん大事なところです。防災アプリは、入れただけでは通知が届かないことがあります。スマホ側の通知許可がオフだったり、地域が現在地のままで自宅が登録されていなかったりするためです。せっかく入れたのに肝心なときに鳴らない、というのがいちばんもったいない状態です。

STEP
通知を許可する

アプリを初めて開いたときに出る通知の確認で「許可」を選びます。うっかり拒否した場合は、スマホの設定アプリから該当アプリを開き、通知をオンに戻します。

STEP
自宅の地域を登録する

現在地任せにせず、自宅の市区町村を登録します。仕事先や実家など、気になる地域も追加しておきます。

STEP
受け取る情報を絞る

地震・大雨・避難情報など、通知の種類を選べるアプリが多くあります。全部オンにすると通知が多すぎて見なくなるため、地震・避難情報・大雨の3つ程度から始めます。

STEP
音とマナーモードの扱いを決める

就寝中に鳴ってほしい通知かどうかを決め、必要ならスマホのおやすみモードの例外に設定します。

STEP
テスト通知で鳴らしてみる

アプリにテスト通知の機能があれば実行し、音量と表示を確認します。

設定を絞る話を補足すると、通知は多ければ安心というものではありません。震度3程度から全部鳴らす設定にすると、数週間で通知を無視するようになります。慣れは、いちばん避けたい失敗です。地震なら震度4以上、雨なら警報レベルからというように、生活が止まる水準に合わせてください。

もうひとつ忘れやすいのが、緊急地震速報や自治体の緊急速報メール(エリアメール)です。これはアプリではなくスマホの機能で、設定から受信をオンにできます。機種変更のときにオフになっていることがあるので、この機会に確認しておくと安心して眠れます。

乾電池で動く小型の防災ラジオと予備の電池

スマホが使えないときの二段構え

アプリを整えたら、二段目です。停電が長引くとスマホの充電が心もとなくなり、電波が復旧しないと情報も入りません。そこで役に立つのが、乾電池で動くラジオです。

ラジオの良さは、消費電力が桁違いに小さく、通信が止まっていても届くことです。単三電池2本で数十時間動く機種が珍しくなく、スマホのバッテリーを情報収集で削らずに済みます。手回し充電つきの機種もありますが、手回しでスマホを実用的な量まで充電するのは現実的でないため、ラジオは「聞くための道具」と割り切って選ぶほうが失敗しません。選び方は防災ラジオの選び方で詳しくまとめています。

スマホのバッテリーは、災害時は照明・連絡・情報の3役を担います。情報収集で使い切らないよう、ラジオとモバイルバッテリーで役割を分けてください。

紙の備えも一段目と二段目のあいだをつなぎます。家族の携帯番号、勤務先、かかりつけ医、加入している保険の連絡先を紙に書いて財布に入れておく。スマホが見られなくなると、番号をひとつも思い出せないことに気づきます。これは無料で、10分で終わる備えです。

公式の確認先をブックマークしておく

アプリの通知はきっかけにすぎません。「今どうなっているか」を確かめるときは、一次情報にあたるのが確実です。次の3つをスマホのブラウザにブックマークしておくと、通知が来たときに迷いません。

ひとつ目は気象庁のサイトです。警報・注意報、キキクル(危険度分布)、地震情報がすべてここにあります。ふたつ目は住んでいる市区町村の防災ページで、避難所の開設状況が出ます。三つ目は国土交通省のハザードマップポータルサイトで、自宅の浸水・土砂災害のリスクを平時のうちに確認しておけます。

デマや不確かな情報は、災害のたびに必ず流れます。見分け方の基本は単純で、発信元が公的機関かどうかを見ることです。この確認の手順は災害情報の確認先と見分け方で整理していますので、あわせて読んでみてください。

ブックマークは「防災」フォルダにまとめる

気象庁・自治体の防災ページ・ハザードマップポータルの3つを、スマホのブックマークにフォルダを作って入れておきます。慌てているときに検索し直さずに済みます。

よくある質問

防災アプリは無料で使える?

この回で挙げたYahoo!防災速報、NHK ニュース・防災、特務機関NERV防災は、いずれも基本機能を無料で使えます。特務機関NERV防災には開発を支える有料の支援プランがありますが、防災機能を使うために課金は必要ありません。自治体の防災アプリや防災メールも通常は無料です。有料でなければ守れない、ということはありません。なお、通信量はかかりますので、災害時に動画配信を長時間見続けるとデータを消費する点だけ頭に置いておいてください。

キキクルはアプリ?

キキクルは気象庁が提供している大雨の危険度分布で、土砂災害・浸水害・洪水の危険度を地図の色で示すものです。気象庁自身のアプリではなく、ブラウザで見るWebサービスとして公開されています。危険度が高まったときのプッシュ通知は、気象庁が案内している民間の防災アプリやメール配信サービスを通じて受け取る形になります。Yahoo!防災速報などの防災アプリでも、大雨に関する通知の中で危険度の高まりを知らせてくれます。地図の色の意味と見方はキキクルの見方にまとめました。

何個も入れる必要はある?

必要ありません。気象・自治体・安否の3系統がそれぞれ1つずつ埋まっていれば十分です。同じ系統のアプリを何個も入れると、同じ内容の通知が重複して届き、結局どれも見なくなります。防災アプリの本当の敵は情報不足より通知疲れです。3つ入れて設定まで済ませたら、そこで区切ってください。

まとめ|前回・次回

情報の備えは、お金がかからないわりに効果が大きい分野です。今回の内容を短くまとめると、気象・自治体・安否の3系統を1つずつ、入れたら通知と地域登録まで必ずやる、そして通知は生活が止まる水準に絞る。この3点です。二段目のラジオと紙のメモは、余裕のある週末に足せば間に合います。

前回は家具の固定と室内の安全確保を扱いました。物理的な備えと情報の備えは、どちらが欠けても困ります。次回は家族との連絡・集合ルールの決め方で、今回触れた171や集合場所の決め方を、実際の話し合いの手順として掘り下げます。

アプリを3つ入れて設定を終えたなら、この分野の備えはもう合格点です。あとは年に一度、防災の日のあたりに通知が生きているかを確かめるだけで足ります。なお、各アプリの機能や料金体系は更新されることがありますので、詳細は各アプリの公式サイトでご確認ください。

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